未知の出来事

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「……なぁ……なぁってば〜…起きろよー」

「…ん…」

 文次郎は誰かに揺り起こされ、うっすらと瞳を開けた。


 昨夜、ようやく5日間に及んだ帳簿整理が終わり、珍しく鍛錬もせずに自室の布団に潜り込んだのが数刻前……。


 ぼんやりと視線を巡らせば、同室の仙蔵がこちらに背を向けてまだ寝ているのが見える。………そう言えば、今日は休日だ。

(………ん…?)

 『同室の仙蔵がこちらに背を向けてまだ寝ているのが見える』……。

 では、今自分を揺さぶっているのは……。

「…!!」

「うわぁっ!?」

 文次郎は素早く飛び退き、敷き布団の下の苦無をひっ掴むと、振り向き様その何者かに布団を被せて目眩ましにし、未だ眠っている仙蔵の横へと着地した。

「おい、仙蔵!起きろ!曲者だ!!」

 言いながら布団を剥ぎ取る。と、そこには。

「……あ…?」

 すうすうと寝息をたてる仙蔵の両腕にがっちりとホールドされ、ジタバタと藻掻く白猫がいた。

「くぅっ…おい、お前!こいつの仲間か!?」

「は…?…あ、あぁ…まぁ…」

「何でもいい!! 今すぐこいつの腕を外せ!!」

「オ、お…おう……(…え…、…………猫喋っとるやんけ)」

 文次郎が軽く思考回路をショートさせながらも喋る白猫を仙蔵の腕の中から救出していると、布団を被せて放置していた曲者(?)が、「ぷはっ!」と顔を出した。

「…なっ…」

 文次郎はそれを見て固まってしまった。その拍子に手を放してしまった猫は、驚いて短く声を上げたが見事に畳の上に着地した。

「いきなり何するんだよ!」

 と、文次郎を睨むその相手には、大きな口、そしてその隙間から覗く鋭い牙、黄色い体躯に、両の手の先には巨大な爪が……。

 身長的には一年生くらいであるものの、外見はまったく見たことのない生物の姿をしていた。

 そしてこの生き物もまた……。

(…喋っとるし……)

「アグモン!」

「ん?…テイルモン!」

 謎の2匹は知り合いなのか、名前(?)を呼び合ったかと思うと、互いに駆け寄って(猫二足歩行かよ)文次郎の目の前で真剣な面持ちで話し合いを始めた。
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