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□ごちゃまぜカウントダウン企画
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ブライダル雑誌をめくりながら、ふと外を見れば初雪。
思わずアイツに電話していた。
「おい、窓の外見ろ!初雪、」
『知ってますよ。私もそれで電話掛けようとしてましたもん』
先に掛かってきましたけど。そう言って笑う電話越しの微妙にくぐもった声が妙に愛しくて、考えるより先に言葉が滑り出た。
「今、会いてぇな……」
『……そう、ですね』
「……会いに行ってもいいか?」
『この忙しい時期に何言ってんですか』
クスクスと笑うアイツの声に、インターホンのチャイムが重なった。タイミング悪ぃ…。
「悪い、誰か来たから一回切る」
「はーい」
名残惜しいが、電源ボタンを押し、来客の確認。
「どちらさまで…って、」
『……来ちゃいました』
一も二もなくロックを解除し、アイツが上がってくるより先に部屋を飛び出した。
「……あ、洋介さ」
「っの、馬鹿!」
「わ、あっ」
エレベーターのドアが開いた真ん前に、鼻の頭を赤くしたアイツが立っていて、迷わずその細い身体を引き寄せた。ドアが閉じても、ボタンを押さないからエレベーターは動かない。
「洋介さん、あの、痛いです…」
「…それくらい我慢しろ。どんだけ心配させりゃ気が済むんだこの馬鹿」
寒い中、わざわざ歩いて来たのだろう。頭は若干雪で濡れているわ耳やら鼻やら真っ赤だわで、見ているこっちが寒くなってくる。
「風邪引いたらどうすんだよ」
「引けませんよこんな忙しい時期に」
「じゃあこんな寒い中わざわざ歩いて来るなよ」
「……さっきは会いたいって言ったくせに」
「俺が会いにいくなら別だろ」
拗ねたように唇を尖らせるアイツに、思わず苦笑した。ああ、また『愛しい』が溢れる、零れる。
「……出せるのはコーヒーか紅茶ぐらいだからな」
「……うん、」
一緒に初雪が見たかった。
アイツが入れたコーヒーを飲みながら聞いた、俺の家に来た理由に、ブラックコーヒーが甘くなった気がした。
『雪に運ばれてきた暖かさ』
(溶けそうなくらい)(焼けそうなくらい)(際限などない)(甘ったるい気持ち)
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