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□ごちゃまぜカウントダウン企画
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月子とアイツがニコニコしながら、『昔はみんなでクリスマスツリーの飾りつけとかやったよね』なんて懐かしそうに話していたから、ふと思っちまった。思っちまったら身体は動きだしていて、あぁ、俺ってばなんて健気。

近所の小さな花屋で、顔見知りのおばちゃんに小さく声をかける。

「おばちゃん、」
「あら、哉太くんじゃない!珍しいわねぇアンタ一人で来るなんて。彼女でもできたのかい?」
「か…?!ち、っげぇよ!勘弁してくれっておばちゃん。全然違うからさ」


あら残念、とか言いながら豪快に笑うおばちゃんに思わず脱力。


「で?今日はどうしたんだい?お母さんにおつかいでも頼まれて来たのかい?」
「んにゃ、ちがくて。あのさ、この店に、毎年ちっせぇもみの木なかったっけ?」
「あぁ、あるよ。これだろう?」


そう言って、おばちゃんが店の中から出してきたのは、去年アイツが嬉しそうに見ていた小さなもみの木。


「そーそれ!いくら?」
「あら、アンタが買うの?やっぱり彼女にプレゼントするんじゃないのかい?」
「だぁかぁらぁ、ちげぇっての!アイツと月子がクリスマスツリーとか懐かしそうに言ってたから、それで、なんとなく……」


ニヤニヤと笑うおばちゃんに、俺もいい加減めんどくさくなってきて、ありのままを言ってしまう。
やめときゃよかった。今更すげぇ恥ずかしい。


「んなこといいからさ!いくらだよ!?」
「はいはい、800円のとこ650円にまけといてあげるよ」
「うぉ、さんきゅー!助かるわ!」


せっかくオマケしてあげたんだから、がんばんなさい。
朗らかに笑ったおばちゃんには、俺の考えてることなんてお見通しらしい。アイツの好きな色のリボンを一つ、つけてくれた。
まあ、これはアイツと月子と錫也と俺と。特別に羊も入れてやって5人で飾りつけするやつだから、別にアイツの好きな色のリボンだけつけてても、プレゼントできるわけじゃないわけで……。

なんてボンヤリ考えながら歩いていたら、背中にぽすん、と何かがあたった。
何気なく振り向いてみたら、


「なーに、ニヤニヤしてんの?」
「げ、」


今まさに思考の大半を占めていたアイツがニッコリと笑っていた。


「に、ニヤニヤなんかしてねーよ!」
「えー、してたよー。だって頬っぺた緩みまくってたもん」



けらけら笑いながら、アイツはふと、俺の右手にぶらさがっていた袋に目を移した。
中身を確認したとたん、嬉しそうな笑顔が顔いっぱいに広がる。


「これって…!」
「おー、あそこの花屋で買ってきた。お前ら今日、クリスマスツリーがどうとかって話してたろ?」
「聞いてたんだ?」
「聞こえただけだ。で、まあ、なんか、久しぶりにこういうのもいいかと思ってさ……」


最後は情けなく尻すぼみになってしまったけど、袋の中のもみの木からアイツに視線を戻したら




『赤い頬と緩んだ笑顔、』




(リボンには気付いてないらしいけど、)(すげぇいい顔で笑ってるから)(つられて俺も)(めちゃくちゃ頬が熱くなった)



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