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□ごちゃまぜカウントダウン企画
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1ヶ月前から騒ぎ立てていた街のイルミネーションがようやく現実味を帯びてきた今日この頃、俺はふと、とある雑貨屋の前で足を止めた。
「……錫也?」
「、ああ、悪い。行こうか」
いきなり立ち止まった俺に、アイツが不思議そうに声をかけてきた。すぐにまた歩きだそうとした俺の隣を、アイツがひょい、とショーウィンドウを覗き込む。
「……もしかして、あれ見てた?」
白くて細い指が差したのは、天使をモチーフにした小さな硝子細工だった。
その天使の髪色と表情は、今、俺の顔を覗き込んでいる彼女ととてもよく似ているのだ。
それが、俺の足を止めた。
「あぁ、まあな…。お前に似てるからさ…ちょっと気になって…」
男子高校生がこんなものを見るのは引かれるか、と思い、つい声が情けなくなってしまった。
が、彼女はふふ、と嬉しそうに笑い、その天使の隣に置かれている、赤い服を着たおじいさんの硝子細工を指差した。
それは、従来のそのおじいさんのイメージより大分スマートで背が高く、何より、『おじいさん』というよりは『おにいさん』というくらいの若い表情だった。
「ね、このサンタさん、錫也に似てない?」
言われてよく見ると、なるほど確かに、少し跳ねた茶色い毛先とか、困ったような笑い顔とか、どことなく俺に似ている…気がした。
「なぁ、」
「ねぇ、」
重なった声は二人分。
同じことを考えてる顔。
また揃って吹き出した。
『クリスマス、楽しみにしてて』
(きっとお互いの手元には)(嬉しそうに微笑みあった)(硝子細工の幸せがあるはずだから)
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