青の祓魔師2
□その瞳の真意
1ページ/5ページ
【雪燐+メフィ夢】
どんな理由があろうとこの関係が赦されるわけないと雪男は思っていた。男同士で、しかも兄弟で。だが兄以外とのふれあいは考えれず、また兄が自分以外の人間とそうした意味で触れ合うなど考えられなかった。
「にい、さん……」
「ん、雪男……」
触れ合う。
ああ違う、そんな言葉で片付けたくない。もっともっと深く、相手を侵略するような、相手に侵略されるような。
そんなキスに酔っていたから、その接近に気づけなかった。
「っ」
木の幹に背を預けた兄が焦ったようにキスを振りほどこうとするのに嫌な予感がして後ろを振り向くと、そこにいたのは副理事長の時乃だった。困ったようなにこちらを向く表情に思考も固まるが、雪男はすぐににっこりと笑って問いかけた。
「なんのご用ですか副理事長」
「お、おい雪男!」
「兄さんは黙ってて」
ピシャリと燐の言葉を遮る雪男は、やはり余裕がないのだろう。ただ彼女の口からどんな否定の言葉が飛び出すかと待ち構えている。その様子を見て必死だと見るべきか、若いと見るべきか悩みながら、時乃は一歩踏み出した。
草を踏む音が不思議なほど響いた。
「ん、別に否定する気はないんだけどね……」
半分独り言のような呟きはこの空間にはよく響く。クスリと笑ってチョイチョイと手招きをする。警戒しながらも近づく二人。時乃はそれくらいならば信用されているのだと安心した。
「どうせ、獅郎がみたらなんていうか、とか言われると思ってるんでしょ」
「……いいえ」
その否定の言葉に時乃は首を傾げた。けれどその意味を察し顔をひきつらせる。まぁあれだけあからさまだったのだから、気かついてもおかしないだろう。
いっそう険しくなる雪男の眼差しと、動揺で臥せられる燐の視線を彼女は苦笑でうけた。きっと雪男は燐に藤本のことを話してないのだろう。けれど知っているから悩み、知らないから悩み。
若者よ、思う存分悩むがよいと年よりじみた思考をしつつ、時乃は燐と雪男がいた木を見上げた。