青の祓魔師2

□愛して
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【夢主+藤メフィ】



時乃は気がつけば正十字学園の副理事長の椅子に座っていた。それもこれも、正十字騎士団日本支部専属鍵師になることを承諾してしまったからだ。
そしてもっと言えば、あの白いピエロに恋をしてしまったからだ。こんな歳でとも思ったが、あちらは悪魔でしかも物質世界では二百年以上の年月を過ごしている。
あまりそれは拘るべき事ではないかもしれない。

「あ、これは理事長に見せなきゃ」

ばっさばっさと書類を裁いていたが、数枚理事長に渡さなければならないものがあった。ある程度一段落つけるとそれらを持って部屋を出た。休憩を入れたいところだったのでちょうどよかった。
もともとあまり人のいないファウスト邸の中を歩いていると、色々なことが頭に浮かぶ。

「私は、無力だな……」

自嘲ぎみにそう呟くのは、あの双子の母親を救えなかったこと。もともと魔神の子を宿したことで生命力の大半を奪われていたとは言え、悔いが残る。
なにより、彼女が生きているうちに二人を抱かせてあげれなかったことが。
ズキリと、手首の傷が痛んだ気がした。父から継いだ再生能力で大半の傷が治ったが、さすがに魔神の炎の傷は残ってしまった。
本当はメフィストが治してくれると言った。しかし時乃は自戒の意味も込めてそれを断った。

『もう医師としては働けませんよ?』

メフィストの少し困惑したような声を思い出した。

『私の元に来ると言うことですか?』

それに時乃は頷いた。そして特異な自分の家系の名字を与えることで、双子の出生に関しての疑いが別の方向に行くようにした。つまり二人の共犯になることを選んだのだ。

「はぁ……」

ため息をついても現状は変わらない。変える気もないが。







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