青の祓魔師2
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その日の終わり、時乃はベッドに座りこんでいた。あの時抱き締めた子どもが、あんなに大きくなって自分の目の前に来たのだ。
燐をその時に抱いたとき、彼女の腕は魔神の炎で焼かれた。痛みよりも先に憐れみを感じた。この世界に生きていくことの困難さは容易に知れたのだ。
「けど元気そうだったな……」
勉強が嫌いで楽観的な燐、勉強はできるが考え込みすぎる雪男。一見して兄弟に、まして双子に見えない二人だが彼女は知っている。お互いにどれほど相手を大切にしているかを。
時乃は心地よい疲労感でうとうとしだした。鍵を調整するのには酷く力を使う。
心地よい微睡みと夜の暗闇が彼女を過去の情景へと導いた。
今でもはっきりとその光景が思い出すことができる、きっと彼女にとって重い記憶だからだ。
「こんにちは、奥村時乃さん」
「っ、誰?!」
私は私を見ている。
目の前の私の後から突然かかった声。視線を向ければ、白いシルクハットを被った道化じみた格好のメフィストの姿があった。
この時の私は自分が経営する産婦人科を明日から数日休む予定でウキウキしていたはずた。
「おや、私のことをお忘れですかな?」
「え……あ、理事長先生……?」
私はこの頃は祓魔師としては働いていなかったが、祓魔塾の塾生としてメフィストのことは知っていた。
それに、
「前にも言いましたが、私は鍵師として働く気はありません!」
昔から私を日本支部専属の鍵師にと呼んでいたメフィスト。彼がかなり力のある悪魔であることも知っている。だが今回の彼の訪問はまったく別のことだった。
「ああ、今回は違います」
「え……?」
メフィストは私から見ても酷く憔悴した顔をしていた。何事も面白おかしくする彼がである。とても嫌な予感がした。