青の祓魔師3


□Halloween Promise
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【藤メフィ前提雪メフィ?】


かしゃん、かしゃん。
どこからともなく鎖の音がした。虚無界の最果てのような場所。火の王が治めるその領地は、空をかける青い魔神の炎とは違う赤い炎が時折舞う、この虚無界では珍しい場所だった。そんな火の王の領地の奥深くそれはある。堅牢な石津くりの城、いや牢獄。豪勢な作りにはなっているがそれは紛う事なき牢獄であった。音はそこからする。
そこには一人の少年がいた。いや、人型をとっているだけで尖った耳も牙も隠しようもなく少年が悪魔であることをしめしている。耳先に赤い炎が灯り、鮮やかな赤と金の髪が不自然に輝くさまを見るに火の王の眷属なのが分かった。だがなぜかその悪魔は足かせをはめられていた。
広い牢獄で足かせをはめられた悪魔はその牢獄に散らばる髑髏で退屈そうに遊んでいる。大きさ的にすべて子供の、それも人間の子供の髑髏だ。よく見ると胴体は牢獄の隅に追いやられていた。ちょうど人がまるまったような窪みがあるのでこの悪魔の寝床であるのかもしれない。
少年の姿をした悪魔は寂しげに髑髏を弄んでいる。ポーンと放り上げてキャッチして。それをしばし繰り返していたが、飽きたのか牢の格子に投げつけころりと横になる。
ぽうと口から小さな炎が漏れ出した。ため息であるらしい。

「暇だなあ……」

彼はそうつぶやいてころころ転がってきた髑髏抱きかかえた。その時、牢獄の空中に炎が灯った。橙色の炎だ。それが口を利く。

「坊ちゃん、坊ちゃん。迎えに来ましたぜ」
「……ジャック?」
「へい。わっちですよ、坊ちゃん」

少年の姿をした悪魔は、その声を聴くと嬉しそうに跳ね起きた。ジャラン。足枷が外れた。橙色の炎は、カボチャのランタンへとその姿を変貌させる。ぎざぎざの口と目から時折炎が噴き出す、少し小ぶりのジャック・オブ・ランタン。それが少年の周りを回る。

「さあて坊ちゃん、今回はどこに行やすか?」
「ジャック、お前こないだあった二人を覚えているかい? 双子の男の子遊んだけど遊び相手には連れてこなかった二人だよ」
「はあて……ああ! 思い出しやした、時の王のところでございますね」
「うん、今日はそこに行こう!」

楽しげな少年にジャックはどこか困ったように上下に揺れた。少し前、時の王の収める領地で遊んだ時、ジャックはかの王から釘を刺された。だが彼は少年悪魔の言うことを聞かないわけにはいかなかった。そいう契約なのだ。まあひどく痛めつけられはするだろうが殺されはしまいとジャックはあきらめて頷いた。

「わかりやした。それでは坊ちゃま、ご出立のご用意はよろしいでござんすか?」
「うん、行こう!」

重々しい音とともに、牢獄の扉が開いた。さまがらそれは地獄のふたが開くような音であった。


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