フライハイト

□3話
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始末屋とは、一般的な便利屋などの組織には頼めない、公にはできない依頼をこなす職業の事。

その内容は殺しだったり、麻薬の受け渡しだったり、要人の警護だったりと多岐にわたる。


エレベーターが6階で止まる。静かに扉が開き、レーヴェは広い廊下を歩く。
やがて1001とかかれたプレーヤーがぶら下がった部屋の前で止まる。扉の横に設置された、この建物に入るときにあった同じ機械に手のひらをかざし、次いで甲のタトゥーをかざした。

このタトゥーはオルクスに所属する際に彫られるものだ。
タトゥーには特殊なインクが使用されており、この機械はそのインクと掌紋を合わせて初めて認識する。

インクはオルクスが信頼のおける人物が作った特別製であり、同様のものを作るのは不可能である。
曰わく、芸術家でも全く同じ色の混ざり具合の絵の具を作れないのと同じらしい。

なので、オルクスに入るにしても複雑な方法は一切必要がない。
単純ではあるが難解なこのシステムを突破出来る者がまずいないからだ。

おまけにオルクスでは所属する際に体内に超小型の発信機を埋め込まれる。

つまり自分の居場所が筒抜けになるのだ。ナイフなどで抉り出されることのないように、発信機は体の奥深くに埋め込まれる。

オルクス所属の医者の医術は相当なもので手術痕はほぼ残らない。どこに埋め込まれたか当の本人は分からないのだ。
さらに金属探知機などをかわすためにダミーも複数埋め込まれている。


レーヴェが扉を開き、部屋に入る。
必要最低限の家具しか置いていない殺風景な部屋であるが、これがレーヴェの自室である。

コートを脱ぎ、適当な椅子に引っ掛ける。
露わになった太もものホルスターも外し、テーブルの上に放り投げた。


『…レーヴェ、道具は大事に扱え』

「銃なんて滅多に使わないだろ」

『手入れもしないで、いざという時に使えないじゃ意味ないだろ!』


怒気を含んだ声でそう言ったと思ったら、ボールから出てきた。
全く…と呟きながら希琉はテーブルの上の銃を取り手入れを始める。
レーヴェは丁寧に銃の手入れをする希琉を尻目に息を吐いた。

希琉はそういう性分なのか実に世話焼きだ。レーヴェは料理だとか掃除だとか、生活に直結するような事は一通りこなせる。逆にそれ以外はぞんざいというか、関心が薄い。

希琉としてはそんなややだらしないところが癇に障るらしい。

レーヴェの持つ銃はスタームルガーMk.Uという暗殺向きの銃だ。銃身が鈍く輝き妖しささえ感じさせるが、生憎これで人の命を奪ったことはない。

口径が小さいので致命傷を与えられないという理由もあるが、何よりレーヴェ自身のルールとしてこの銃での殺人を行わないからだ。
使用するとしたら、銃自体の命中精度は抜群に良いので足止めや威嚇射撃に使う程度。宝の持ち腐れもいいところだろう。







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