検証:アニメ化の功罪
□ストーリー作成の考察
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前述したように、キャラ先行の物語作りは難しい。
かといって、全くダメなのかというと、そうでもない。
「流浪の戦士冒険記」
というブックがある。
正直、愛しいニクス嬢が悪役扱いされているようなので乗り気のしないブツだった。
でも、蓋を開けてみたら珠玉の至宝であった。
ニクス嬢は単なる悪役ではなく、その本来の優しく慈悲深い性格、ちょっとドジで情けないとこ、そして比類なき強さやフニクラ様とのア・ヤ・シ・イ♪関係まで…
ニクス嬢の真髄の要素を違和感なく美味しく引き出した上で最後には主役のレイナ姫を立てる構成にできている
「炎はすべてを灰にする…」
の最高の名台詞の使い方を間違えた以外は
『完璧』といって過言ではない一冊だった。
そう、損な役回りにしても、きちんと救いを用意しておけばいいのだ。
今回の件ならば、エリナ嬢に敗れてしまう話を作ったにしても、戦いを経てエリナ嬢が、
姉貴激愛でワガママ娘のエリナ嬢が、ニクス嬢との戦いを経て何かを感じて人間的に成長するとか。
そういう進行だったら、負けたにしても救いがある。
だが、例の件は全国のニクス嬢ファンに対する嫌がらせとしか思えない作り方といえよう。
因縁の相手に一方的な理不尽極まりない屈辱的な敗北。陵辱といっても過言ではない。
しかも「流浪の戦士冒険記」のレイナ姫戦と違い、相手に心を残すこともない無意味な敗戦。
進行もおかしい。
将軍の城に単身乗り込み戦い、レイナ姫相手でも難なく戦った勇気と行動力のあるニクス嬢が、不倶戴天の仇敵を相手に臆するなどあり得ない。
「シン…てめえに会う為に地獄から這い戻ったぜ!」
のケンシロウ並みの復讐心と執念の炎を燃やして挑むに決まっている。
フニクラ様の激励(?)など不要だろう。
そして、一方的に敗れるまで戦うことも、あり得ない。
「冒険記」の将軍戦を見れば判るが、ニクス嬢とフニクラ様は無謀な戦いはしない。
危なくなったら下手な意地を張らずに撤退する
「退く勇気」
をもっているのだ。
浅はかな者はそれを臆病と笑うかもしれないが、それは大間違いだ。
戦術、戦(いくさ)の基本中の基本だ。
まぁその二点は私流の解釈としても、とりあえず
「可哀想キャラ」
「フニクラ様」
というキーポイントを描こうとして全く描けていない失敗作と言わざるを得ない。
そこに残ったものは、例えようもない憎しみだけだった…。
アニメ作者様一同には
「流浪の戦士冒険記」
を見習ってほしかった。