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□☆桃の木桃子様へ
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コンコン


深夜0時、俺はある部屋の前にいた。
ドアを静かに叩くと中にいた人物が顔を出す。
目が合うと、俺はそいつにだけ聞こえるように言った。

「星、見に行こうぜ」


‐夜空と星と‐


「急にどうしたの?」

俺を自分の部屋に通しながら、そいつは不思議そうに尋ねてくる。
中は暗くて、スタンドライトの明かりだけがほのかに灯っていた。

「今日は今月中で星が1番きれいに見えるらしいぞ。だから、久しぶりに誉と一緒に見たいと思ってな」
「ふふっ、こんな時間に?」
「たまにはいいだろ?」

ニッと笑って言ってやると、誉は苦笑して部屋の電気をつけた。
明るくなった部屋で上着を着始めるあいつを見てふと思う。
そういえば・・・

「誉・・・なんで眼鏡なんかかけてるんだ?」
「あ、これ?」


外すの忘れてた、そう言って机のノートを片づけてその横にそっと置く。
長い付き合いになるが、眼鏡をかけてるとこなんて初めて見た気がする。

「視力、悪くないだろ?」
「うん。これ、伊達眼鏡だから」
「・・・は?」

なんで部屋にいるときにかける必要があるんだ。
それとも俺が来る前に誰かと会ってたのか・・・

「集中できるかなぁと思って」

外に出る支度をしながら、俺の方に振り向いて誉は答える。

「ちょっと考え事してて、ね。なかなか集中できなかったから形だけでも、
と思ってかけてみたんだけど・・・変だったかな?」
「いや・・・。お前、眼鏡も似合うのな」
「そうかな?宮地君にもさっき言われたけど」

外に出ると、昼とは打って変わって風が少し冷たく感じる。
それでも空はどこまでも澄んでいて、暗い夜道を照らしていた。
  
 
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