☆Other Novel

□あまあけ
3ページ/3ページ

 
僕に文句をつけようとして、正臣は小さなくしゃみをした。
これだけ濡れていたら風邪をひいてもおかしくないだろう。

「う゛ー、なんか寒くなってきたかも」

僕の制服を掴んできた手が微かに震えていた。
心なしか顔色も悪い気がする。

「はぁ〜。正臣さ、僕んちによったら?」

「へ?」
「家もう目の前だし。薬買ってくるから、正臣さきに上がってて」

正臣に傘を持たせて、家のカギを取りだす。

「はいコレ。タオルとか使っていいから、ちゃんと乾かしなよ」
「へーい。わかりましたよお母さんっ」
「やっぱり帰る?」
「・・ごめんなさい」

***

早足で薬局からもどると、部屋からは微かな寝息が聞こえてきた。
脱ぎ散らされた制服とその横には濡れたタオル。
どうやら僕の忠告は守ったようだ。

「まったく、こんな格好で・・・」

聞こえない分大きなため息をついて、自分の布団を敷く。
正臣をなんとか移動させて、上からもかけてあげた。

「・・ん・・・」

幼さを残したままの整った顔が時折苦しげに歪められる。
頬はほんのり赤みを帯びていて、少し熱があることを象徴していた。



前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ