キョン
□被写体
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「嫌…消してよっ」
「何でそんな勿体ないことをしなくちゃいけないんだよ」
私より素早く携帯を拾い上げて制服のポケットに仕舞う。
ずっと、あの中に私の画像が消えることなくあるんだ。
まだ震えの止まらない私を支えて立ち上がり、キョンくんは少し屈んで私と視線を合わせた。
「入学した時から***が好きでずっと撮りためて来たんだ
だからこれだけは消せない」
「そんな、頃から…?」
「ああ…気付かなかったろ」
愛しそうに目を細めて、私の頭を撫でるキョンくん。
まだ怖いけれど、こういうところにはきゅんとなる。
「どうした?顔が赤いぞ」
「だ、大丈夫!…あ!
私、友達待たせてたんだ…」
引き止めて悪かった、とまた頭を撫でるとキョンくんは廊下に置かれたお弁当箱を私に手渡してくれた。
「ありがとう」
「じゃあまた放課後な」
「うん」
お弁当を受け取って少し急いで食堂へ向かう。
不意に聞こえたシャッター音に振り向けば、そこにはさっきの笑顔のキョンくんが立っているだけだった。