キョン
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「んー…ないわ!」
SOS団の部室内の本棚を漁るハルヒは不満気に言った。
くるりとこちらを向いた頭に遅れて揺れるオレンジのリボン。
なんだか嫌な予感がする。
寧ろ嫌な予感しかしない!
「あんた達!どーせ暇なんだから図書室で本借りてきなさい」
真っ直ぐに伸びた指先は俺と***を指し、瞳もまた俺と***だけを見据えていた。
***と二人きりになれるのは悪いことじゃあない。
寧ろいいことに含まれる。
「うん、私行くよ」
「別に俺も構わんが…一体何の本を借りてこればいい?」
「何って、決まってるじゃない」
俺を世間知らずの様な目で見てくるこいつに一言言いたい。
でも到底一言で収まりきらなさそうなのでやめておく。
そして頼む、図書室にある範囲の本を注文してくれよ…!
「オカルトに心霊現象、都市伝説、怪談話!夏だもの、ね!」
「ね!って何だ、ね!って!
やれやれ…よし、行くか」
ぽん、と***の頭に手を置くと笑って顔を上げて頷く。
夏の風物詩のホラーであったりグロテスクなものとは程遠い、真逆の幸福を噛み締めながら二人で図書室へ向かう。