キョン

□放課後狂詩曲
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「…おいキョン、アレ!
***さんじゃねえか!」




谷口が力強く指を差した先には、教室の黒板の文字を綺麗に消している一人の少女。

清楚だとか何とか騒ぐ谷口。
…まったく、昼休みの廊下で恥ずかしい奴だ。



「おい、谷口…ちょっ!?」

「やあ***さん日直?
この俺谷口が手伝ってやるよ!」

ずかずかと他クラスに入って遠慮なく話し掛けやがった。
こいつの神経を改めて疑わさせてもらった。

視界の隅に一瞬古泉が映ったのは気にしないでおこう。
だってここは古泉がいるクラスなんだから。当然のことだ。
だからこっちを見て微笑んでいたのも気にしないでおく。


…そんなことよりあいつは!



「ありがと…谷口、くん?」

「こんなんでよければいつだってやってやるぜ?なあキョン!」

「用は済んだか?さあ食堂だ
すみませんね***さん、こいつが迷惑かけて…」

「……う、ううん!
そんなことない、です」



やはり違和感のある他クラスを出て食堂に向かう。

***の態度に一瞬笑みを崩して、俺達が教室を出た後***に話し掛けていた古泉を俺は見逃さなかった。


今回は少し、奴を気にしないでおけそうにない様だ。





「可愛かったなー***さん!
少し背伸びして上の方の文字を消す姿もよかったけど話し掛けて正解だったろキョン!?」

「あーあーそうだな
悪印象を与えるには大正解だ」

「な…っ、悪印象ォ!?
あの天使の微笑みでお礼言ってたじゃねえか!」




誰が天使だって?
堕天使の間違いじゃないのか?

…地に落ちた、未だ穢れを知らない堕天使の。




自販機の前で楽しげに笑う鶴屋さんを尻目に、俺は最後の一口を頬張った。




 
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