shelved novels

□+1年の海の話
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「今頃あずさは部活にひいこら言ってるのかしら」
「朝霞、あずさから何か連絡あった?」
「連絡は来てるけど無視してる。見てもない」
「見てあげるくらいいいんじゃないかなあ」
「そもそも、それらしいモンが書けるまで連絡すんなっつってんのに泣き言なんか送って来やがるんだぞ。それらしい返事が欲しけりゃ成果を見せろという話で」

 車内でも繰り広げられた話に、何度聞いても酷いと菜月とアニの目が死んでしまっている。

「俺の誕生会の時にさ〜メグちゃんがね、あずさチャンが朝霞クンの何に惚れたのか理解できないって言ってたけど〜、女の子からしたらどう?」
「す、好きなことに、打ち込む姿勢……」
「プリンとだし巻き玉子と温玉が好きな奴に悪いヤツはいないぞ」
「だからって恋愛の好きにはならないデショ? 大体それって議長サンのかなり偏った主観だからネ」

 そうアニが言った瞬間、彼の胸倉は瞬時に捕まれていた。そしてギロリとひと睨み。解放されるや否や、やっぱり生き別れの兄妹か何かだよ、と。アニが言うことによれば、ロイと菜月は似ているところがまあまああるらしい。卵好きなところや、今のように手が出てしまうところなんかもそう。
 結局、ロイを男の人として見るポイントの話は措いておくことになった。実際、私と菜月はロイをそのように見られないのだから話が続かない。あずさには合宿で頑張ってそれらしい成果を上げてもらって、本人の望む甘い雰囲気でのデートなどに漕ぎつけていただければと。

「そう言えば、議長サンの好きなタイプって〜?」
「お前に言うとロクなことにならない気がする」
「あっ。つまりあるにはあるんだタイプ」
「そりゃあ、多少はな。例えば、骨と皮だけのもやしっ子よりは、体つきがしっかりしてる方がいいなとか」
「議長サン近くで例えるなら、松岡クンよりは高崎クンみたいな?」
「圭斗はなあ、あれはダメだ。夏はガリガリを通り越すし不健康の象徴だ」
「松岡クンをそこまでディスれるのって議長サンか石川クンくらいだよね〜」
「……徹のそれは、悪意の塊……菜月には、まだトニーへの愛がある……」
「圭斗への愛とか。うわっ、気持ち悪っ。うへー」
「福井サンは〜?」
「……私は、明るすぎるとか、距離感を一気に縮められるのは……少し、苦手……」
「――ってコトは〜、“俺”もアウトだったね〜、ゴメ〜ン。ほら、俺って髪型もああだったしチャラく見られやすかったデショ? 福井サンの一番嫌いなタイプじゃなかったかなって今となっては思う」
「……実は……アニは、そうでもない……アニは、“あれ”も空気を読む一環だとは、思って見ていた……」
「そうなんだ。うちには地雷だったけど」
「うん、知ってた! でも議長サンも俺的には地雷だったよ!」
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