shelved novels

□2016+1 0622
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「って言うか……電車じゃダメなの!? 怖すぎるんだけど!」
「大丈夫だ」
「何を根拠に!?」
「道は大体真っ直ぐだって聞いてる」
「真っ直ぐの方がスピード感麻痺してアブナイの! そもそも誰情報なのそれ!」

 なんと、俺は今、朝霞クンがハンドルを握る車の助手席にいます。ペーパードライバーの助手席でしょ? 怖すぎるよね。ちなみに車はレンタカー。一応星港市内だからか、家の近くで何でも揃っちゃうってすごいなー!
 だってさ、星港走りとかってすっごい危ないんだよ、ペーパードライバーの朝霞クンがふらりと突っ込めるような場所じゃないんだよ星港の路上は! 免許だって山羽で取ってるんでしょ!?

「どうだ! お前がぎゃあぎゃあ言ってるうちに西海に入ったぞ!」
「な、何とか抜けたって感じでしょ〜……」

 星港市を抜けて、車は隣の西海市に入った。こんなところに何の用事があるのかはわからないけど、今日の俺はただただ朝霞クンについていくだけ。今日は朝霞クンがいろいろ用意してくれてるみたいだから。

「で、西海の、どこに?」
「どことかじゃねーんだよ。海沿いの道を走るのが最高だって聞いてたから」
「だからそれはどこ情報なの。まあ、確かにいい景色だし雰囲気はあるけど」
「あ、西海と言えば今度ベティさんの店にも行こうぜ。お前の事何回か話したら連れて来いって言われてるし」
「えっ、何言ってるの?」
「別に、何てこたない。いろいろあったけど親友として落ち着いたとかさ。去年のイブとかもお前と出かけてたから、デキてんのかって聞かれたけど、そこは否定しといた」
「まあ、そこまではさすがにね〜。朝霞クンに対してラブはラブだけどそういうラブじゃないし〜」
「お前には宇部がいるもんな」
「も〜、人の失恋掘り起こさないでよ」
「っと、この辺か。山口、海岸に降りてみるか」
「いいよ〜」

 車を停められるスペースの脇には海岸へと続くコンクリートの階段がある。そこから降りて行けば、目の前に広がる海。そう言えば、海なんていつ振りだろう。港じゃなくて、海岸は。
 靴の隙間から砂が入り込んで来るのなんて今は気にならなかった。海岸を歩きながら、朝霞クンといろいろなことを話して。今までのことや、これからのことなんかを。それから、恋の話も少し。
 意外だったのは、このテのトピックで朝霞クンに少し動きがあったことだった。やっぱり部活を引退したら少しずつ変わってくるのかもしれない。だけど、俺のポジションはもう揺らがないはず。今なら純粋にあずさチャンを応援できるかもしれない。
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