shelved novels

□2016+1 0622
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「あ〜さ〜か〜ク〜ン、お〜は〜よ〜」

 ――と、インターホンを鳴らすけど、まあ1回目じゃ返事なんてないよね〜。朝霞クンは朝が苦手だから。だから起こして〜なんて頼まれてるんだし。ここは根気よくインターホンを鳴らすよ。

「あ〜さ〜か〜ク〜ン、お〜は〜よ〜」

 すると、インターホン越しに「あい」と寝起きの声。そしてドアの鍵が開いた。俺を出迎えてくれた朝霞クンは当然オフのモード。メガネはかけてるけど、目が開いてないから見えてないっぽい。あらら、壁に頭ぶつけちゃったよ。大丈夫?

「うう……眠い……」
「うがいしてさ、水でも飲んだら?」
「そーする……」

 ――と台所に戻ろうとした瞬間。まだ足元のおぼつかない朝霞クンはよろめいて、バランスを崩しかける。何とか倒れ込まずには済んだけど、朝の朝霞クンはこれが危ない。覚醒するまでに時間がかかるんだよね、結構。
 それに何が危ないって、朝霞クンは片付けも苦手で部屋にはいろんな物が散乱してるんだ、本とかDVDとか。今はまだ辛うじて足の踏み場があるけど。今もよろめいた拍子に何かの箱に躓きそうになってたし。

「朝霞クン足元の荷物大丈夫だった? って言うか大層な箱だね。通販?」
「えっ、ちょっ! しまった! えーと、見なかったことには……」
「出来ないね。もう見ちゃった」
「あー、今ので目が覚めた。バレたならしょうがない。何を隠そう誕プレというヤツだ」
「それで隠そうとしてたつもりなの!? その割には堂々と置いてたね!?」
「ただ、モノがモノだけに帰りにもう1回取りに来てくれ。さすがにこれを持ち歩けはしないから」
「うん、そんな大きさでしょでしょ」

 その箱は一辺が20センチほどの立方体っぽい感じなんだけど、持ち歩きには適さない物らしい。と言うか隠してるつもりだったなら下手すぎるでしょでしょ……。

「ねえ、せっかくだし見ていい?」
「ああ。俺は顔洗ってるし好きに見てくれ」

 何をくれたのかな〜って、箱を開いてみると。中から出て来たのは耐熱ガラス容器のセット。常備菜や残り物を冷蔵庫に入れとくのに便利そうで、伊東クンもすごくいいって言ってたから欲しいな〜とは思ってたんだけど。ウソでしょ…!?

「ねえ朝霞クン! ナニこれ!」
「耐熱容器のセットだけど、もしかして外したか? それなら悪い」
「ううん、大当たり! でも俺、朝霞クンにそんな話した覚えないんだけど!」
「どっかで喋ったから俺にまで伝わって来るんだろ。まあ、とにかくだ。それを使って日々精進してくれ」
「うんうん、頑張るよ〜、ホントにありがと〜!」

 結構いい値段するんだよね、これ。どんな仕事かにもよるけど朝霞クンのバイト1回分の給料くらいは飛ぶヤツ。うん、頑張ろう。これで美味しい物作って、朝霞クンにも食べてもらおう。
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