shelved novels

□FF神崎有能説
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 簡単そうに見えて、これは何気に難しい舵取りなのだと理解しました。手にしたシャープペンシルでトントンと紙の上でリズムを打ち、何かが降って来るのを待っている状態。
 来たるファンタジックフェスタの番組に向けた方針と言いますか、果たしてどのような構成でどのようなミキシングを求められるのか。そんなようなことを考えていたんですよ。

「こーた、どーしたよ」
「ああ、野坂さん。ちょっと、考えてたんですよ」
「考えてたって、キューシートのテンプレじゃないか」

 キューシート、つまり番組進行表。テンプレートの枠線だけが印刷されたそれには、まだ私自身の手で何も記されていません。はてさて、どうしたものか。
 ここ最近のMMPのサークルでは、ファンタジックフェスタに向けた練習や構成に費やす時間が多くなっています。2・3年生は全員ファンフェスのDJブースに出ますから、少しでもというところでしょうか。

「そんな考え込むほど難しいことすんのか?」
「いえ、それがまだわからないから考えてるんですよ」
「お前誰の班だっけ」
「班長は星ヶ丘の朝霞先輩ですね。あとのアナウンサーは果林で、ミキサーは私と青敬の松江先輩です」
「読めねーな」
「ええ、それなんですよ」

 どうして私がこんなにこの番組の構成を考え込んでいるのかと言えば、それこそ野坂さんの言ったように「読めない」からなんです。
 ただ普通に番組をやるなら、いつもやってるようにサッサッサッと構成を練って、BGMや曲を合わせたり、アナさんとの打ち合わせに入っていくんですけどね。
 今回のファンフェスは各班60分の公開番組。当然生放送。それだけだったら別に普段やってることと何ら変わりはしません。何が読めないのかって、朝霞先輩なんですよ。

「朝霞先輩か」
「ね? 難しいでしょう」

 ファンタジックフェスタに出すことになっているDJブースは、定例会の方々が主動しているんですね。なので、そこで編成される班に関しては基本的には定例会の3年生の方が班長になります。
 たまに例外もあって、それは定例会の3年生がいない班。前対策委員の3年生がいらっしゃる班であればそういう方が班長になることもあるようですね。例えば、高崎先輩や山口先輩など。
 別に朝霞先輩が疫病神とか外れクジというわけではないんですよ? ただ、普段ラジオをやってないという点で、少しわからないなあと思ったんです。如何せんステージメインですし。
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