shelved novels

□FF神崎有能説
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「ラジオ番組の構成の仕方?」
「はい。朝霞先輩がどうやって構成していくのかを知らなければ話が始まらないと思いまして」

 後日、班打ち合わせ。結局あの日、サークルではそれと言った収穫はありませんでした。圭斗先輩やヒロさん相手に番組が出来れば誰が相手でも大丈夫、というのがMMPでの風潮ですからねえ。
 端から第三者に聞こうとしたのが間違いでしたね。こういうことはやっぱり本人に聞かないと。他者を介すると解釈違いなどの事故が起こる可能性も高まりますし。

「ラジオメインの大学でも番組構成やキューの出し方には個人差があるので。ステージメインとなると、より一層その辺の認識を共有しておかないと事故に繋がるかなと」
「そうか、なるほど。それは確かに大事だな」
「ちなみにステージだと逆キューは――」
「使わないかな」
「そうですよね〜」

 一応どういうトークをどういう流れでするつもりかは考えてあるんだ、と朝霞先輩はノートを広げて見せてくれました。これは、過去に見たアナウンサーのネタ帳の中では最も細かい書き込みですよ。ミキサーだと野坂さんの書き込みがこれくらい細かいですね。
 ただ、細かく書き込まれているのは喋る内容ではなく言葉の意図やどこに繋がるのかといったこと。そんな意図が聞いている人にちゃんと伝わるのかと言えば、正直伝わるとは思いません。
 この細かいノートのどこをどうしたらどんなトークになるのかが分かるのは正直これを書いた朝霞先輩くらいでしょう。良くも悪くもプロデューサー的ですね。
 ステージメインの人と言えば、一言一句決まりきった台本を書くという人も少なくありません。決まりきった台本をただ読むだけの番組になるとトークのピッチが速まって、結果として巻き進行になるんです。

「さすが、朝霞先輩はプロデューサーだけあって番組のビジョンと言うか、果林の番組まで含めた上での完成形に対するイメージが現段階でしっかりつかめているような感じですね」
「問題はそのイメージにアナウンサーとしての俺がついて来れるかだけど」

 アナウンサーとしての力量がプロデューサーとしてのそれに劣るというのは朝霞先輩本人も重々承知しているようで、どこまでPとしてのレベルを落とせばアナウンサーとしての自分がついて来れるんだと、私には良く分からない苦悩をしていたようです。
 ただ、出来ないからと言ってレベルを落とすところまで落とすくらいなら初めからやるなんて言わなければいいだけの話で、今からでも俺は少しの伸びしろに賭ける。そう言う朝霞先輩の眼光の鋭いこと。“鬼のプロデューサー”はステージでの話じゃなかったんですか。ラジオでも十分鬼ですよ。
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