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□MMP打ち上げ話
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 現在時刻は5時ちょっと前。菜月先輩はホワイトボードに今日のタイムスケジュールを記している。

「とりあえず6時半開始だから、その10分前には到着してるのが好ましいという意味では……徒歩40分として――」

 今日の飲み会は、大学からスクールバスが出ている駅からひとつ行った駅のすぐそばにある焼鳥屋で行われる。ああ、大学御用達駅とは言えスクールバスで10分かかるところ。徒歩なら30分。今日の会場は厳密にはちょっと手前にあって、徒歩25分といったところか。
 本日は圭斗先輩がゼミの都合、三井先輩が野暮用とかで現地に直接乗り込まれるとのこと。一応サークル活動は行うということになっているから、こっちのことは菜月先輩に一任されているらしい。時間に厳格な菜月先輩だから、遅れないようにしなければという責任感も強い。

「いや、違う。サークル棟からうちの部屋までが徒歩25分だから、そこから20分と考えると――」
「はよーごぜーやーす」
「よう律」
「ああもうめんどくさい! 5時半出発だ!」

 投げ出されたホワイトボードには、ぐちゃぐちゃとした計算が躍っていた。時計の針は5時を回り、タイムリミットはあと30分。あとサークル室にいないのはこーたと奈々だ。

「5時半出発すかァー」
「りっちゃん、1時間もあれば着くよなさすがに」
「まァー、よっぽどのことがなければ大丈夫でしょう」
「如何せん徒歩だからな」
「バスとか電車は使わないんスか」
「考えてなかった」

 今日は季節通り暑い日だった。夕方とは言え、会場に行くには長い上り坂を越えなければならない。そう考えた場合、歩くのがいいのかバスと電車を乗り継ぐのがいいのか。ただ、普段バスを使わない菜月先輩にはそういう乗り物を使うという発想がなかったらしい。
 キュッキュッと、今度は律がホワイトボードに図を書いている。サークル棟から飲み会会場に行くまでの選択肢だ。めんどくさいことを避けるのに定評がある律だ、画期的な案を出してくれるに違いない。

「えー、まずは現行のここから会場まで徒歩で行くという案ですね」
「うん」
「次は、一旦バスに乗って、電車で一駅移動するパターンすわ。楽っちゃ楽ですけど、金がかかりやす」
「続けて」
「で、あとはバスに乗って駅まで行って、そこから一駅分歩くというパターンすね」
「これはどういう利点があるんだ?」
「歩く距離がちょっと短いです。それと、大学からの徒歩だと坂を上ったりしなきゃいけないんスけど、この一区間は平坦です」
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