shelved stories

□2014-2015
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■幽霊に足が生えた話

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「あれっ、珍しいことがあったモンだなー」
「――と言うか、今日サークルやるってメールしたのはそっちだろ」
「あはは、ダメもとで送ってみたけど来てもらえるとビックリするなやっぱり」

 久々に覗いたサークル室では長が一人、メンバーを待って席に構えていた。まだ夏休みではあるけど大学祭もあるしそろそろ1回くらいは集まっておきたい。そんな狙いだったらしい。
 普段ならこの部屋に足が向くことはなかっただろうけど、今が夏休み中であることや、サークル開催を知らせるメールが大石からだったということが要因かもしれない。もしこれが坂井さんからのメールなら絶対に来なかった。

「大石、髪濡れてるけど雨にでも降られた?」
「ううん、プール行って来たまんまだから」
「プール?」
「たまに市民プールに行ってゆるゆる泳いでんだ」
「へえ」

 大石が水泳をやってたとかいうのは割とどうでもいい情報だけど、確かに俺が来たときには地面も濡れちゃいなかったし、天災と言うよりは人為的な要因と考えるべきだったな。
 そんなことを話しながら次は誰が来るかと待つけれど、人が来る気配はない。本当に今日、この時間にサークルがあるのか? と言うかUHBCってこんなにルーズなサークルだったっけか。

「人、来ないなあ」
「大石、あと15分待って始まらないなら帰るよ」
「時間間違えたかなあ」

 夏休みだからみんな忙しいのかもなあ、なんてまた勝手に暢気なことを言いやがる。大学祭についての話し合いじゃなかったのか。そもそもサークル開催日はみんなの都合を先に聞くのが普通じゃないのか。

「おはようございます」
「あー、よかったぁー! アオおはよー」
「あれっ、石川先輩じゃないですか。生きてたんですね」
「おはようアオ、残念ながら俺はそう簡単に死ぬタマじゃないと思うよ」
「ああそうだ大石先輩、ミドリから伝言を預かってます」
「何て?」
「繁忙期が思ったより繁忙期だったんでちょっと遅れまーす、だそうです」
「まあ、情報センターは忙しいだろうなあ」

 へえ、UHBCにも情報センターでバイトしてる奴がいるのか。そう言えばあの狐もそろそろ繁忙期だと言ってたような気がするな。


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繁忙期が思ったより繁忙期。この裏でひいこら言ってるミドリを受信。

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