shelved stories

□2013-2014
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■宿る情熱のパートB

※「宿る情熱のシークエンス」9ページから

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「はい野坂クン。これ、アタシたち前対策委員からの差し入れ。あと2日、頑張ってね」
「ありがとうございます」
「で、今んトコどんな感じなんだ?」
「ええ、それと言って大きなトラブルはなく。それと今年もミキサー筆記試験は行っています」
「おっ、どうだった?」

 ミキサー筆記試験というのはその名の通り、ミキサーに対して行われる筆記試験のことだ。ミキサーの配線の仕方や技術的なこと、番組構成のあれこれなどが出題されるペーパーテスト。
 野坂君によれば、このペーパーテストを用意したのは伊東だということだ。かの伝説の女帝である緑ヶ丘の城戸さんに問題を作ってもらったとのこと。鬼のような難易度になっていることも想像に難くない。俺と福島さんはそれを想像するだけで震えてしまっていた。

「野坂、ウチの連中の成績はどうだ? 結果次第ではミキサーも咲良サン呼んで特別講習だな」
「緑ヶ丘は皆さんとても優秀でした。特にタカティなんて、1年生なのに全体でも5位でしたからね」
「おっ、高木やるな。1位はどいつだ? 伊東か」
「あ、えーと」
「高崎、1位はノサカで、伊東は2位だ。実技ならともかく、ペーパーテストでこのヘンクツ理系男の右に出る奴なんてそうそういないぞ」
「とりあえず、立ち話も難ですし中へどうぞ」

 モニター会場に通されるや否や、準備をしていた対策委員のメンバーに対して野坂君がイス持ってきてと声を張り上げる。こういうときの動きが早いのは戸田さんで、やっぱりこういうところはステージのディレクター気質なのだろうか。

「はい高崎サンどーぞー」
「サンキュ」
「石川サンどーぞー」
「ありがとう」
「紗希サンどーぞー」
「ありがと」
「菜月サンは一般参加者だから、はいおしまい」
「――ってちょっとつばちゃん俺のイスはー!?」
「お前は床にでも這いつくばってろ」
「もー、イスどこさ、取りに行くよ自分でー」

 重ねられたパイプの丸イスを、1脚ずつ外しながら配り歩く戸田さんが山口をスルーするのはお家芸のようなものなのか。これもきっと星ヶ丘文化……いや、朝霞班文化なのかもしれない。

「やっぱり俺は先輩にそういう暴言を吐くなんて理解が出来ない。山口先輩どうぞ」
「野坂クンありがとね。まあでも俺とつばちゃんの仲なんで」
「キモい洋平」
「だからつばめお前はなー」
「いーのいーの大丈夫。向島風に言うと何だっけ、ラブ&ピースだっけ?」
「でもさすがに」
「あーもう野坂ウザい! いいっつってんだからいいの、アタシと洋平の仲なんだから!」

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