shelved stories
□2013-2014
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■IF初心者の目標のお話
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「うーん、菜月先輩の素晴らしさを俺の語彙でどう伝えるべきか」
「えっと、啓子先輩、聞いちゃマズかった、ですか?」
「野坂は先輩大好きっ子、と言うかそんな生易しい次元じゃないね。菜月先輩と圭斗先輩について語らせたらスゴいよ、引くから」
野坂先輩になっち先輩について語らせると主観が混ざって宗教のようになってしまうという判断から、他の先輩が対策委員の活動内容と一緒に教えてくれることになった。
「対策委員としての最初の活動は初心者講習会になるのかな。菜月先輩はそこで全体講習とアナウンサー講習、それと見本番組を担当してくれたのね。それって本来別の講師さんに頼んでたんだけど直前にドタキャンされて、2日前の夜に急遽講師をお願いしたんだよね」
「ひいっ、スゴいです…!」
「2日前のお願いで快く引き受けてくれる器の大きさね。人徳と言うか。それでいて技術もあるし」
「そんなスゴい人なんですね……」
啓子先輩が話す内容に先輩がみんなうんうんと頷いている。1年生は、あの講習がたった2日前に準備された物だったなんて、という驚きが勝っているみたい。
どんな講習だったんだろう、どんな番組をやるんだろう。アナウンサー講習をしてたってことはアナウンサーさんなんだろうな。サークルに入るのがもう少し早かったら番組も聞けたのかな。
「あ」
「どうした、奈々」
「菜月先輩の番組が収録されたMD持ってますッ!」
「今?」
「定例会で預かったのカバンの中に入れたままでしたッ!」
プレイヤーも預かってきてるんで今聞けますよ、と奈々がカバンの中をごそごそと漁っている。まさか今番組が聞けるだなんて。白いMDがポータブルプレイヤーに挿入され、準備完了。
イヤホンからは、ラジオ番組。きっとこの女の人がそうなんだろうな。明るいけど、どこかちょっと落ち着いた雰囲気もある声。あ、やっぱりパーソナリティーさんはなっちさんだ。
自分がミキサーだから後ろの方にも意識が行ってしまうんだけど、スゴいなあ、上手いなあって。技術的なことはまだ全然わからないんだけど、なっちさんと互いを生かしあってる感じがする。
「ん?」
そのミキサーさんが目の前にいるんだなあって。その人が私にDJネームをつけてくれたんだなあと思うとちょっとプレッシャーを感じる。でも、私もこんな風になりたい。目標は高いくらいがいい。
「なっちゃんどうだった?」
「啓子先輩、私、野坂先輩のファンになりました…!」
「「ナ、ナンダッテー!?」」
「何て言うんですか? わかるんです、番組聞いて。技術もそうなんですけど、アナウンサーさんとの意思疎通と言うか、声の乗らない時間もきっと楽しそうなんだなって」
「――だ、そうだけど、野坂」
「でも、それは俺だけで出来ることでもないし」
「謙虚なところも素敵です…! 私は野坂先輩を目指して頑張ります…! あの、野坂先輩が私にミキサーの初心者講習をしてくれたりとか……」
「いや、俺は人に物を教える器じゃないと言うか青女には直クンというイケメンがいるじゃないか!」
「直先輩はキラキラしていてとても私が直視出来る存在じゃないんです…!」
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「きっと心を生かすから」に絡んだなっちゃんのお話。啓子さんがノサカと一緒になって「ナ、ナンダッテー!?」をやってるのが地味にかわいい。汎用性高いのよ。
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