shelved stories

□2012-2013
7ページ/16ページ

■残虐な犯罪について触れた話

++++

「リン、どうした。青白い顔をして」
「飯を食っている時に残虐な事件について調べる物ではないと痛感しているところだ」

 そもそも、飯を食ってる時にネサフをするのもどうかと思うけど、それはついついやってしまうから俺も人のことは言えない。しかし、リンが顔面蒼白になるくらいの事件というのが逆に気になるんだ。
 飯を食いながら残虐な事件について調べていたことによって生じた吐き気に現在苦しめられているということで、まあ、リンがバカだったんだろうとしか言いようがない。

「グロ系か?」
「想像はしたくないが間違いなくグロい。下手なゲームより間違いなく。CERO Zだな、レーディングをつけるなら」
「そりゃ、ゲームは作ってる人間が比較的まともだろうからな。凶悪な犯罪者とは思考回路が違っても当然だ」

 リンが開いていたページの履歴を遡り、同じ物を目に入れていく。確かにグロい。内容は割愛するけど、事件の全貌がまとめられた文章を読むと何とも言えない。文章だからより想像を掻き立てるのかもしれない。かと言って、画像ならいいのかと言えば、それはそれで吐き気を催すだろう。
 俺たちの会話に興味を示したのか、美奈が一瞬画面を覗き込んだようだったけど、すぐに目をそらしてしまった、一文、ひと段落だけでも衝撃が強い。強盗、強姦、殺人等々。文字にしてしまうとそれだけなんだけど、その内容が本当にピンキリだと。

「こういう事件を美談のようにしてドラマや何かの原案にするのも理解は出来ん。正義ぶるワケではないが、そういうので興味関心を煽って金にする連中の考えには、それはそれで吐き気がする」
「歴史の一幕に絡んだ事件だとかそういう人物の一生とかなら何ら問題なく受け入れられるのにな」
「大河ドラマがあるくらいだ。それに、そういうので悪党が取り扱われるのは稀だろう」

 こういうことについて考えているだけでも胸糞が悪くなってくる。精神鑑定がどうとか少年法がどうとか、そんな物は取っ払ってしまえばいいと思ってしまうほどには。もちろん、それはそれで必要な物だとわかっているのだけど、それを盾にするような連中が性質悪い。

「ああ、気分が悪い。スッとした物で中和したいぞ石川」
「俺に言われても」
「炭酸飲料は持ってないのか」
「自分で買ってこい」

 自分たちだって、いつそういったことに巻き込まれるか。他人事のようにそれを調べてはいたけれど、それらは実際に起こったこと。実際に事件に巻き込まれた人や、その被害者の家族らの心情などは知り得ない。

「リン、逆に別の調べ物をしたらどうだ?」
「逆の?」
「腹を抱えて笑えるような」
「なるほどな」

 こうやって平和ボケでいられるのが当たり前のようで当たり前ではないという当たり前だ。今はまだ、俺の周りで誰も気が触れていないだけ。


end.


++++

書いたものの、エコが気分悪くなってお蔵入りに。

.
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ