shelved stories

□2012-2013
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■日の出後の尋問大会

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「しかし、お前は何をそんなに嗅ぎ回っとったんだ?」
「いや、別に」

 そしてそれから始まったのは、リンから俺に対する逆尋問。そりゃ、リンは寝てると思って油断してましたよ。いろいろ嗅ぎ回ったのは事実だけど、どうしてそれをこう追求されなければならないんだ。
 追求されるだけの状況で暢気に寝てたお前らが悪いんじゃないか、俺が何をしたって言うんだ。別に何かを盗んだとか、そういうワケでもないのにまるで罪人扱いだ。

「まず、DVDの中身を確認したな」
「何を見てるんだと思っただけだ。洋画のラブストーリーとか、随分と雰囲気のあることをしやがるなと思いました」
「内容と言うよりオレは音楽に集中していた。美奈も内容と言うよりは中世的な雰囲気に魅せられていたが。内容はあまり覚えとらんということで一致した」
「あーはいそうですか」

 って言うか映画の内容を見ろお前らは。

「あと、紅茶の缶を見ていたな」
「少なくとも、ここでは見たことがないぞ。その包装紙はこの缶を包んでたな」
「あれは昨日、美奈にもらった物だ。包装が華美だったのは昨日がオレの誕生日だったからだろう」

 つか誕プレ贈るとかこの場合アプローチのひとつですよね。

「リン、そもそもの疑問だけど、いつもの場所に美奈の車が停まってなかったけどこれはどう説明する?」
「美奈の車は海岸沿いの駐車場に停めたままだ。昨日の朝4時半頃か。オレが海岸でキーボードを弾いていたところにふらりと現れてな。それから行動を共にしていた」

 ――っておいおい、昨日お前に電話したときには一緒だったってことだな!
 つかお前それ、普通に見たら完全にデートだからな! 恋人たちのするそれだ!
 この強欲鈍感狐の野郎〜……久々に頭に血が上ってきたな。お前だって童貞じゃないんだから少しは察しろこの野郎。

「その程度のことでオレと美奈が付き合っているように見えたのか」
「そもそもだ、美奈はそう易々とパーソナルスペースに他人を入れるような奴じゃない。そうやって、肩を寄せ合って寝てるっていうこと自体が美奈を知ってれば驚くことだからな」
「それはお前の持つ小学3年当時から上書きされとらんイメージだろう。今は多少なりとも許容範囲が広がっているという可能性を何故捨てる。10年も経てば人など変わるだろう」
「癪だが、一理ある」

 ソファーでは相変わらず美奈が眠っている。こうも無防備に寝顔を晒しているのも、化粧を落としていないからか。
 ただ、最後のパーソナルスペースの件でちょっと思ったんだ。ひょっとすると、そういうところが良かったのかもしれない、なんて。
 まあ、そんなことを俺が考えてるとかやっぱり腹が立ちますけどね! 美奈に変な虫が付くのはやっぱり我慢ならない。


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エコメモSS NO.1060「ラナウェイロード」の後の話。美奈はまだ寝てる。
このテの話では石川はきっと1人百面相状態で、顔芸の域にまで達すると思うんだ。

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