拍手連載 先生と流川くん
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授業の空き時間に何となく屋上に来た。
別に理由とか無かったけど、学生時代を思い出した途端、無性に行きたくなったのだ。
授業中で誰もいないはずなのに、屋上には既に先客がいた。
「こんな時間に屋上にいるなんて、いい度胸してるじゃない」
「ゲッ……」
屋上で見つけたのは、4人の男子生徒。
髭面、リーゼント、パンチパーマ、金髪、と真面目な生徒達ではない事は明らかだ。
「そっちからクラスと名前を言いなさい」
「見逃してよ〜」
「それは無理」
泣きつく(フリだと思うけど)生徒を無視してクラスと名前を聞くと、右から水戸くん、野間くん、大楠くん、高宮くん。
4人とも一年生だった。
「一年のくせにやってくれるわねぇ」
嫌味たっぷりに言うと、金髪の大楠くんがニヤニヤしながら私を見る。
「そういうセンセーこそ、よくやるよな」
「何が?」
眉根をひそめる私に、今度はパンチパーマの高宮くん。
「文化祭、センドーと一緒に回ってたって?」
私が驚いて目を見開くと、4人はニヤニヤと笑っていた。
「あれは、道に迷ってたから案内してたの」
「手なんかも繋いじゃってたらしいじゃん」
「繋いだんじゃなくて、掴まれただけ!」
「高校生相手に、いいのかねェ」
確かに文化祭以来、やたらと仙道くんの事を聞かれる事が増えた。
その内容は、大概が今みたいな話。
こういうヤツらがいるから変な噂がたつんだわ。
吐き出すようにため息をつくと、それを見た水戸くんがフッと笑った。
「センセー、流川にも懐かれてるらしいじゃん」
「はぁっ!?」
明らかにさっきよりも動揺して、声が裏返ってしまった。
すると水戸くんは声をあげて笑う。
「満更でもないって顔だな」
仙道くんの時にも感じたけど、コイツも侮れないオーラを感じる。
「いいんじゃねェ?流川が懐くなんて滅多にねェ事だし」
「アイツは唯我独尊男だからなァ」
それは、やけに流川くんを知ってるような口ぶりだった。
「……アンタ達、流川くんと仲いいの?」
不良青年達と流川くん。
とても共通点があるようには思えない。
「いや、別にダチって訳じゃねェよな」
「しいて言えば、花道繋がりって所か?」
そこでようやくピンときた。
「ああ…アンタ達、桜木くんの友達だったわね」
たまにバスケ部の練習を見に行くと、入り口付近でたむろっている彼らを見かけた。
言われて見れば、桜木くんも赤い髪をしているし、彼らの仲間であってもおかしくない。
それでも私の知る桜木くんは、髪色以外を見ると普通のバスケット青年なんだけど。
「ねぇ…。桜木くんって本当にアンタ達の仲間なの?」
思った事をそのまま口に出すと、4人は一斉に笑った。
「髪の色だけじゃあ判断出来ないってか」
「あれで真面目な高校生に見える訳?」
「だって…」
馬鹿にしたような口調の大楠くんと高宮くんに、年甲斐もなくムッとする。
だってバスケットをしてる桜木くんしか知らないんだもん。
私が口を尖らせていると、すかさず水戸くんが口を挟む。
「まあな。暴れてたのは中学ん時だからな」
それに野間くんが言葉を付け足す。
「そんで今はバスケに夢中」
さらに高宮くん。
「そうそう。和光中の桜木花道の名が泣くぜ」
「ふーん。桜木くんって凄いんだ」
彼らの会話から、桜木くんの力量が窺えた。
「花道の頭突きは痛ェよな〜」
「アイツのパンチくらって平気なヤツって、あんまりいねェしな」
パンチって、本当に不良なんだ…。
話してるとフツーなのになぁ、なんて考えてると、いきなり知った名前が飛び出てきた。
「オレの知ってる限りでも、アイツのパンチくらって生きてんのは洋平と流川くれェじゃね?」
え……??
私は大楠くんの言葉に、一瞬だけ身体が固まってしまう。
「何でそこに流川くんが出るわけ!?」
流川くんこそ、こういう人達とは関係なさそうなのに。
すると…。
「アイツ、よく花道とやり合ってんぜ?」
「やり合うって……ケンカするの?」
「入学した時からずっとな」
「そうそう、犬猿の仲ってヤツ」
水戸くんと高宮くんの説明で、二人が仲が悪い事を知った。
「どうして二人は仲が悪いの?」
「もしかして、流川くんもどこかのグループに入ってるとか?」
たて続けに質問する私に、水戸くんが再びフッと笑う。
そして急に身体を横に動かした。
「それは本人に聞けよ」
「え?」
スッと水戸くんが身体をずらすと、そこには横になっている流川くんの姿があった。
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