仙道連載
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目が覚めたら知らないマンションだった。
あれ?ここどこだっけ??
寝起きの頭をフル回転させようとするが、元々朝は苦手な為にぼんやりとしか思い出せない。
え〜っと……。
昨日はフツーに残業してて帰ったのが9時頃。
それからコンビニ弁当食べながらテレビ見てたんだよね。
それからシャワー浴びて……ビール飲んでベッドに入って寝たはず。
うん、間違いない。
未だかつてお酒に飲まれた事なんてないし、絶対に私は間違ってなんかない。
じゃあここはどこ??
身体を起こして部屋を見渡すも、やはり見覚えのない部屋にわずかな不安が胸を過ぎる。
「誰かいませんか〜?」
とりあえず部屋の中を散策したけど誰もいない。
部屋は特に珍しくもないワンルーム。
8畳ばかりの部屋に小さなキッチンとお風呂とトイレのついたスタンダードな間取りだった。
ハンガーに掛かってる制服からして、女の子が住んでるのは間違いないようだ。
何か変な事件に巻き込まれてたりしないでしょうね…。
最近ニュースを見る度に『女子高生殺人』やらそんな記事を目にする事が増えた。
私に限ってそんな事するはずは無いと思うのだが、非日常というモノが突然訪れる事は20数年生きている内に学んでいたので可能性は無きにしもあらず。
とりあえず怖いからさっさと帰ろう。
私はとりあえず目についた自分の携帯を持って外に出た。
「あ、おはよう」
玄関から外に出た途端、いきなり声を掛けられた。
ビクリと身体を震わせて、目撃者がいるんじゃヤバいかもなぁ…なんて考えながら相手を見ると、握り締めていた携帯を取り落としそうになった。
え??
ええ!!?
隣の部屋のノブに手を掛けている所からして隣人だろうか?
いや、そんな事はどうでもいい。
私はその隣人の彼を見て思わず絶句した。
だってその人はどこかで見たことがあって……。
でも……。
そんなはずは……。
「ああ、昨日引っ越してきたお隣りさん」
「え!?私??」
「あれ?昨日お母さんと挨拶に来たよね??」
「何それ…?」
全く身に覚えのない事を言われて混乱する私に、相手は変な顔をしている。
引っ越しって何!?
昨日は私、フツーに仕事してたよね?
っていうかその前に、確かに引っ越したい願望はあったにしても、何で学生が住むようなワンルームなの?
せめて1LDKとかちょっと広めの部屋にしようよ………って、そんな事考えてる場合じゃないか。
ハッと我に返ると隣人と名乗る男が心配そうに私を見ているのに気づいた。
とりあえずここは話を合わせておこう。
何にしてもややこしい事件に巻き込まれるのだけはゴメンだ。
私は出来るだけ顔を隠しつつ(無理だけど)、声色も若干変えてフツーに振る舞う事にした。
「すみません、ちょっと寝ぼけしちゃって」
「ハハハ、よくあるよね」
よくあるわけないでしょ!
ヘラヘラと笑っている男に突っ込みたいのを堪え、さっさと立ち去ろうと思っていたのに……。
見れば見るほどどこかで見たことある顔に、私は釘付けになっていた。
この声といい特徴ある髪型といいどうしても引っ掛かる。
特に深く関わるつもりは無いんだけど、一度首をもたげた好奇心は止められない。
私は意を決すると、思いきって尋ねてみた。
「あの、あなた名前は?」
「昨日言わなかったっけ?」
「実は覚えてなくて…」
すると男はフッと微笑むと、気を悪くしたそぶりもなく穏やかな口調で答えた。
「仙道彰」
そうだ……思い出した。
このツンツン頭……。
昔流行ったバスケ漫画の登場人物だ。
日常と非日常は隣合わせ。
非日常へ続く扉が開いた事に気づいたのは、この数十分後の出来事だった。
『もしかしてコスプレですか?』
『はい?』
〜第2話につづく〜
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