仙道連載

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神様って意外とその辺にいて、私の事を見ているのかもしれない。

ズキズキする頭とゾクゾクする背中。

なのに私はニヤニヤしていた。

なぜなら、クラスマッチ前日にして風邪をひいたらしいのだ。

学校を休むという選択肢もあるのだが、変に社会人をやってたせいか休む事は気が引ける。

「老体にハードな練習なんかさせるからだよ…」と情けない独り言を言いつつ薬を頬張ると、そのままダルダル家を出た。









「今日は一段とダルそうだな」


「わかる?二日酔い」


「お前、未成年だろ」


「堅いことばかり言ってると白髪増えるよ」


いつもは楽しいコッシーとの掛け合いも今日はちょっとダルい。

顎肘をついたままぼんやりしてる私を仙道くんが心配そうに見ている。


「大丈夫?」


「ん〜」


「風邪ひいた?」


「ん〜」


我ながらテキトーな相槌。

それは自分でも分かってるけど、私はしんどい時に笑顔を振り撒けるようなステキな人間ではない。


「お前、そんなんで明日大丈夫なのか?」


さすがのコッシーでさえ心配してくれてるらしい。

だけどさ、私はご立派な人間じゃないからさ。


「8割無理…」


正直に言った。

するとコッシーはため息をついたが、「とりあえず保健室行くぞ」と今度はいい人になった。



コッシー…、君は何て爽やかなんだろう。



いつも怒るから、明日出ないとか言ったら怒ると思ってたけど、意表をつかれてちょっとだけ感動したよ。



「ねェ、次の授業何だっけ?」


「古文だろ?」


「じゃあ遠慮なく寝て来よう」


「元気じゃねェかよ!」



うん、これがやっぱりコッシーだ。


だけどコッシーは私を叱りながらも保健室に連れて行ってくれた。







保健医の診断は『風邪による発熱』。

どうやら早退する事になったらしい。


練習出れなくなってラッキー、って思っていると「ニヤニヤすんなよ」とコッシーに叱られた。


「コッシーってば、私が帰るから寂しいんでしょ?」


「勝手に言ってろ」


と、いつもの感じで始めた時だった。


ガラッと保健室の扉が開き、数人の女子が入って来た。


「##NAME1##ちゃん大丈夫?」


「早退だって?」


「あ、うん」


同じくソフトボールに出るクラスメイトだ。

どうやら保健医が担任に連絡したので鞄を持ってきてくれたらしい。


「せっかく練習したのに。風邪ひくなんて最悪だよね」


「だけど練習きつかったもん。##NAME1##ちゃん一人暮らしだし大変だったよね」


「明日は無理しないでいいから!でも、出れたらいいね」


「……うん」




何かかなり嬉しかった。

こんな言葉、大人になってから聞いた事ないし。

彼女達からの温かい言葉に感動してると、コッシーの隣に黙って立ってた仙道が気のせいか笑った気がした。

「何?」と聞こうとした時だ。

保健医がカーテンを開けた。


「お迎えが来たわよ」



お迎え?



「アナタ、一人暮らしだったのね」


「あ、はい」


「お母さんに連絡したら、親戚に連絡してくれて、そちらの方が迎えに来てくれたわよ」


親戚?


誰??



この世界にも慣れて来たが、この無茶苦茶なシステムにはまだ慣れない。

人を勝手に本の中に飛ばすは、勝手に若返らせるわ…。

あげく今度はいるはずのない親戚?

もう何が来ても驚かない。

そんな自信はあるんだけどね。



迎えに来た人物を見たら、たぶんこの世界に来てからベスト3に入るくらいに驚いた。



「ご迷惑をおかけして申し訳ありません…」


「え?」


先に反応したのはコッシー。

私には声だけじゃわからない。

だけど、保健室に入って来た人物を見たら私も思わず声を上げた。


「うわ…………」



ただでさえ熱で身体が熱いのに、今度は興奮で熱が上がった気がする。

身長、約2メートル。

ビッグジュン、いや、ボスザルと呼ばれる男がそこに立っていた。









『神様……まさかの出会いをありがとう』








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