ショート夢(SD)

□HAPPY BIRTHDAY
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大晦日の夜、インターホンが鳴ったと思ったら流川くんがいた。


「何でいるの?」


「会いたかったから」


「いま何時だって思ってるの?それに…そういう事は止めようって言ったでしょ?」


私達は教師と生徒。


気持ちを確かめ合った後に、時期が来るまでは絶対に会わないと決めた。

お互いの立場を考慮した結果そうなったのだ。


「関係ねェ」


「関係なくない。見つかったらどうするの?」


流川くんも納得した事なのに、今日は引き下がろうとしない。


「中、入っていい?」


「ダメ!約束は約束よ」


厳しめに言うと、流川くんは少し黙った後に小さく呟いた。


「……寒い」


「え?熱でもあるんじゃない!?」


私が心配になって顔を覗き込んだ途端、流川くんは部屋の中に入ってきた。


「ちょっと!何勝手に入ってんのよ!!」


慌てて流川くんを追いかける。


「流川くん!」


マイペースだとは思ってたけど、こんな強引な性格じゃないはずなのに。


流川くんはスタスタとリビングに行くと、勝手にソファーに座り込んだ。


「こんな時間に来て…お家の人は知ってるの?」


時間はもう0時前。

真面目な高校生が出歩くような時間ではない。


まあ、流川くんが真面目かと問われると難しい所なんだけど…。


「何か言わないと分からないわよ?」


黙り込んだ流川くんの前に立って腰に手をやると、流川くんは私を見上げる形になった。

ジッと見上げられ、時間だけがただ過ぎる。


「何か言いなさいよ…」


小さくため息を漏らすと、ようやく流川くんが口を開いた。


「一番にアンタに会いたかった…」


え!?


まさか、そんな謙虚な言葉が流川くんの口から聞けるとは思わなかった。


流川くんは、大晦日とか正月とか関係ない人だと思ってたのに。


「そんな柄じゃないでしょう」


思わずそれが口を出た時に、時刻が0時を回った事に気づいた。


「そういえば…明けましておめでとう」


「違う…」


「え?何が」


再び黙り込み流川くん。


いつもはもう少し話すのに…。



「何が違うの?」


もう一度聞き直すと、流川くんは視線を逸らして答える。


「もう10歳差じゃねぇ…」


「え?」


それって……。


もしかして…。


「今日、誕生日なの?」


こくりと頷く流川くん。


「31日?それとも元旦?」


「元旦…」


「そうだったの…」


それでわざわざここに来たんだ。


意外と可愛い事するじゃない。


思わず笑みが漏れる。


「おめでとう」


笑いを堪えながらそう言うと、流川くんはこくりともう一度頷いた。


「知らなかったし、何も用意してないや」


ケーキは当然、プレゼントなんてある訳がない。

何かないかなって考えていると、ふいに腕を掴まれた。


「なァ…、こっち来て」


「ん?」


そのままぐいっと手を引かれると、流川くんは私のお腹に顔を埋めた。


「そういう事はしないって約束よ?」


「……だめ?」


そんな上目遣いに見られたら、断れる訳ないでしょ?


「今日だけ…」


駄目押しの掠れた低音。


「今日だけよ」


私はそう返事すると、ソファーに座って、流川くんの頭を膝の上に置いてあげる。
そしてゆっくりと頭を撫でてあげると、流川くんは目を閉じた。


それでも9歳差か…。


改めて歳の差を実感するとため息しか出ない。


でも、この寝顔を見てると、そんな事どうでもよくなるんだから不思議なものだ。

じっと寝顔を見ていると、流川くんがいきなり目を開いて私の手を握った。


「なぁ…」


「今度は何?」


「……ダメ?」


言わんとしてる事は分かるけど…。


「それはダメ」


ピシャリと言い切ると、流川くんは少し口をすぼめて不満そうな顔をした。


「ちゃんと待ってるから…」


もう一度頭を撫でると、流川くんは私の手を握りしめ、再び目を閉じた。



『HAPPY BIRTHDAY!流川くん』




〜あとがき〜

悩んだ結果、連載の二人が気に入ってるので二人の物語になりました。
連載よりも進んでますので、訳わかんなくなってますよね(笑)

連載ももうすぐ終盤に入るし、番外編も増やしたいな〜。

流川くん、誕生日おめでとう!




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