幼なじみシリーズ

□越野の場合〜両想い編〜
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夏休みが近付いてそろそろ期末試験の季節。
苦手科目の数学を習うべく、やって来たのは幼なじみの宏明の部屋。
高校に入った辺りから宏明は私と距離を置くようになった。
仲良しで同じクラスの仙道君がいうには、宏明は「ツンデレ」なんだとか。
「ツンデレ」の意味はわからないが、数学の苦手な私は、理数系にめっぽう強い宏明にご教授願おうと頼み込んだ。
最初は嫌だと即答されたが、図書館でって条件で一緒に勉強してくれる事になった。
なのに図書館は試験前でいっぱいだし、やむを得ず宏明の部屋にお邪魔する事になったのだ。
久しぶりの宏明の部屋は男らしい匂いがして、小さい頃に遊んだ時とはずいぶんと印象が違ってみえた。
私は宏明の机を借りて、宏明はベッドに寝転がって数字の羅列と睨めっこ。
全くと言っていいほど意味不明な問題に、さっそく越野先生に質問。

「ね〜、宏明〜?これわかる?」

「ん〜」

「32ページの3問目」

「ん〜」

「宏明、聞いてる〜?」

宏明の適当な相槌を疑問に思い、振り向いて見ればベッドに仰向けになった宏明の姿。
よく見ればその瞳は閉じられたまま動かない。

「ちょっと、宏明!?」

「…」

「…寝てるや」

すーすーと規則正しい寝息。

寝顔、久しぶりだな…中学以来か…。

あの頃に比べて大人っぽくなった寝顔に年月が経った事をしみじみと感じた。
あの頃は同じクラスだったし、よく一緒に帰ったりしてたな。
からかわれる度に宏明ってば顔真っ赤にしちゃってさ。
噂になるのが恥ずかしいからとか言って、学校で口きいてくれない時期もあったっけ?
宏明の寝顔を見ながら昔を思い出す。

昔は良かったな。

理由も無しに宏明の側にいられたし。
今じゃ仙道君を介してじゃないとなかなか連絡くれないもんな。

「…」

全く起きる気配の無い宏明にため息を一つ。

まあ、今日は少しの間だけど二人でいられて良かったか。

じっと宏明の寝顔を見ていると、今までひた隠しにしていた気持ちが込み上げてきた。

「…好き」

小さく小さく呟いてみる。
宏明は気付いてないだろうけど、私はずっと前から好きだったんだよ?
尚も無反応に寝息をたてる宏明にもう一言。

「無防備〜。…襲っちゃうから…」

「…」

あれ?なんか顔、赤くなってない?

もしかして…。

「宏明、起きてるでしょ…」

「…」

途端にキュッと引き締められた唇が宏明の覚醒を証拠づける。

「顔、赤いんだけど…」

さらに追い討ちをかけると、宏明は私に背を向けるように寝返りをうった。

「宏明!」

「見んなよ!」

ようやく返事をした彼の耳は真っ赤。
よほど恥ずかしかったのだろう。
本当に恥ずかしいのは私なんだけど…って言いたい所だけど、あんまり宏明が可愛いからどうでもよくなった。
そろそろケリをつけろって仙道君にも言われてたし、言えたのはいい機会だったのかも。

「何で寝たふりなんてしてんの?」

「…別に」

拗ねた様な宏明の声。

「久しぶりに幼なじみが部屋に来たのに〜?」

からかう様に言うと宏明は小声で呟いた。

「…だからだよ」

「へ?」

「…」

尚も無言の宏明。
あれ?何だこの沈黙…。
宏明困ってる?

「宏明?」

堪え難い沈黙に呼びかけると、宏明はいきなり起き上がった。

「…わっ」

「…何が襲っちゃうだよ


胡座をかいたまま、顔を真っ赤にして私を上目に睨みつける宏明。

ヤバ…可愛い過ぎ!

「オレがどんだけ我慢してるかわかんね〜?」

「何の話?」

宏明の話の意図が全く読めずに首を傾げるばかりの私。

「そんなキャミ着たり、短けーパンツ履いたりして…」

ああ、これの事。
確かに意識して露出はしたものの、本気で気にしてくれてるなんて…。
まだまだ若いな〜、なんて感心してる場合じゃないか。

「だってこの部屋暑いんだもん」

エアコンつけてない方が異常だよ、と思わず憎まれ口。

「あげくシャワーまで浴びてきてるし…」

「夏は汗かくでしょ?」

ため息をつく宏明はちょっと疲れ顔。

「…もう帰れ」

「え!?何で??」

告白はスルーですか!?
それとも無理って事ですか??

俯いて立ち尽くしていると付け足された言葉。

「……エアコンつけてやるから、着替えてから出直してこい」

パッと顔を上げると宏明は照れ臭そうに横を向いていた。

「………たら集中出来ねーんだよ」

小声で聞き取りづらかったけど、私にはちゃんと聞こえてたよ。

『好きな女がそんな格好してたら集中出来ねーんだよ』

私は涙が出そうなのを堪えて、精一杯の元気な声で返事した。

「うん!」

ショートパンツをミニスカートにしたらどんな顔するだろうななんて走りながら考えたけど、宏明はきっと顔を真っ赤にして怒るんだろうな。
そんな宏明を見るのが大好きなんだけど。




「お前さ、あの服…仙道の入れ知恵だろ」

「わかった?」

「シャワー浴びて来たのもそうだろ」

「へへ…」

「アイツ…殺す……って言いたいけど、今回だけは許してやる」





〜終わり〜

〜あとがき〜
越野夢は書いてて楽しいですね〜!
照れ屋で可愛いってのが私の中のコッシー。
実際に存在したら多分からかい倒すでしょう…
ここまでお読みいただいてありがとうございます!




 

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