深淵シリーズ短編集

□初詣
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「ちょっ、まてっ」
「ナルト〜シカマルが私達のお願いを聞いてくれないの! ナルトからもお願いしてくれる?」
 シカマルの止める間もなくいのが大声でナルトに訴え、それに応えるようにすっと襖が開く。
「シカ…いのとヨシノお母さんのお願い聞いてあげないの?」
 澄み渡った空気が震えるように綺麗な声が耳に届く。
皆はその声に誘われて襖の方へ目をやり、そして全員が例外なく固まった。
「ナ…ル…」
 男か女か判別つかないほどの美貌が女物の着物によって更に引き立てられ、少し長めの金の髪はシカマルと対の花飾りによって飾り立てられていて。
 人とは思えないほどの美しさに皆が見惚れてしまったのだ。
「シカ…どうしたの?」
 首を傾げてシカマルを見るその仕草はとても愛らしくて。
シカマルはその姿に見惚れながらも自らの完敗を認めた。
「ねえ! すごいでしょ! 女の私達が霞んじゃうくらい! ナルトって飾りがいがあるわ〜」
 一緒に出てきたサクラとヒナタが興奮で顔を赤く染めながら皆に訴える。
皆も我に返り無言で首を縦に振った。
 ナルトはそんな周りの反応を気にせず、シカマルだけ を見つめている。
 ほんのり赤く染まった顔がまたなんとも言えずかわいらしく。
シカマルは思わず蕩けるような微笑みを返していた。
「…やっぱりかっこいいわーシカマル。あの表情を見せるのがナルトだけだなんてちょっと悔しいわよね」
「そういうのならナルトだって。あんなにはっきりした笑顔を見せるのってシカマルだけなんだもの。ナルトの感情をちゃんと引き出せるのがシカマルだけだなんて悔しいわよ」
 二人の様子を見ていのとサクラが囁きあう。
そんな中、ナルトがシカマルに近付き、上目遣いのまま口を開いた。
「シカ…ヨシノお母さんとサクラ達がね、シカとお揃いで初詣行きましょうって。俺、シカとお揃いがいい」
「……わかった。ナルがそう言うなら今日だけな」
 ナルトが出てきた時点で負けを認めていたシカマルは、内心溜息を吐きながらも頷いた。
ナルトはそれが嬉しかったのだろう、花が咲いたような笑顔を浮かべてシカマルにしがみ付いた。
「シカ…大好き!」
「ナル…」
 優しい手つきで抱き締め、背中を撫でるシカマルは幸せそうで。
二人のそんな姿をいつまでも見ていたいと願う同期達だった。
「さて、それじゃシカマル、着替えましょうね!」
 ヨシノは嬉しそうに着物を持ち上げ、シカマルを促す。
シカマルは苦笑を浮かべながらも着ている服に手をかけた。

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