同い年の親子シリーズ

□サイと父上の日
2ページ/7ページ

 数十分後。
「ただいま」
 馴染みのある気配と共に聞こえてきた声に、サイは勢いよく立ち上がる。
 シカマルとナルトが帰って来たのだ。
 そのまま部屋を飛び出しかけて、大事なものを忘れたことに気付いたサイは、机の前まで戻り、薔薇の花束をしっかりと抱えてから玄関へと向かった。
「お帰りなさい、父上、母上」
「ただいまサイ。まだ起きてたの」
「ただいま。せっかくの休みなんだ、先に寝ていてもよかったんだぞ」
 サイの出迎えを嬉しそうに受けながらも心配して声をかける二人に、サイは胸が温かくなるのを感じながら笑みを浮かべる。
 シカマルもナルトもそんな可愛らしいサイに笑みを浮かべていたが、辺りから漂う香りに不思議そうな表情を浮かべた。
「? サイ、お前何か持ってるのか?」
「花の香がするね。これは……薔薇、かな」
 二人の言葉に頷いたサイは、シカマルの前に立つと後ろ手に持っていた薔薇の花束を目の前に差し出す。
「父上、今日は父上の日なので、プレゼントです」
「! 俺にか!」
 差し出された緋色の薔薇の花束を受け取ったシカマルは驚いた様子だったが、すぐに表情が喜びに変わり、優しい笑みを浮かべた。
「そうか、今日は父の日か……ありがとな、サイ」
「これも野生の花だね。すごいな、サイ」
 ナルトも生き生きとした美しい薔薇に笑みを浮かべサイを褒める。
母の日の時に言った言葉を忘れずに準備していたサイがナルトはとても愛おしかった。
「母上に、母の日があるからには当然父の日もあるんだよって教えていただいたんです。それで今度は失敗しないように調べて、赤色の薔薇を探したんです」
 嬉しそうな様子のシカマルに喜んでくれたことがわかったサイは得意げに説明する。
それを聞いたシカマルはナルトに目を向けた後、サイに視線を戻して薔薇を片手で持ち、開いたもう片方の手で抱き締めた。
「サイ」
 温かいシカマルの手にサイは心から安堵し、ゆっくりと目を閉じる。
気持ち良さそうなサイにシカマルは頬を緩めるとちらりと薔薇の花束を見た。
 父の日には赤い薔薇の花。
 そのサイの選択は正しいものだ。
 母の日で失敗したサイが一生懸命調べて考えた結果なのだろう。だがまだ少し甘い。
 自分だから誤解することはないが、精通している者であればあらぬ誤解を招くこともあるかもしれない。
シカマルはふむ、と頷くと、ナルトに視線を向けて目だけで何事かを訴える。
 ナルトはシカマルの視線の意味に正確に気付き、呆れとも苦笑ともつかぬ表情をシカマルに返した。
「サイ」
 シカマルの呼びかけにサイは素直にシカマルを仰ぎ見る。
その無防備な状態のサイにシカマルの顔が近づいてきて。
「ん! んんっ」
 気がつけばサイの唇はシカマルの唇にぴったりと塞がれてしまっていた。

次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ