深淵シリーズ短編集

□腹心と呼ばれしは
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「最近、守焉様と何かあったのですか?」
 部下の一人から発せられた質問。
 それは周囲にいた他の部下達にも聞こえ、ざわっと大きく反応した。
 質問を受けた当事者である加務は、内容よりもその周囲の反応に驚く。
 書類が一段落ついて休憩を取っていた所での突然の質問。
別に嫌ではないが、彼の意図がわからず、内心首を傾げる。
 だが、周囲の者達の反応からして、どうやらあずかり知らぬ所で話が広まっている模様だ。
「別に何もないが、どうかしたのか?」
 加務が聞き返すと部下達は顔を見合わせ、躊躇いながらも口を開く。
「加務班長、最近守焉様とずいぶん打ち解けていらっしゃるじゃないですか。だから何かあったのかって班内で結構話題になってるんですよ」
 加務はそれを聞いてああ、なるほど、と納得した。
 確かに最近よく守焉と接していることが多い。
それは執務で必要だからということに加えて、彼の信頼を得て全てを打ち明けてもらえたからだろう。
 ナルトを守るため、彼の計画の協力者となってからは通常の仕事に加えて計画の為の下準備もあり、解部にいる時間の半分以上は守焉と共にあるのだ。
 しかしそれを正直に部下達に話すわけにもいかず、加務はあいまいに誤魔化す。
「別に何があったわけではないが、執務で守焉様と話すことがいろいろとあったからな。俺だって曲がりなりにも解部副総括長だ。守焉様の信頼を得ていないとやっていけないだろうが」
「まあ、そうですけど……」
 部下達は納得がいかないという顔をしていたが、加務は何か言い出す前に切り上げるつもりで立ち上がった。
「ほら、そんなこと気にしている暇があれば執務をしろ。今日中の書類が終わらないぞ」
「…わかりましたよー」
 しぶしぶ席に戻る部下達に加務は内心苦笑する。
 話を切り上げる口実とはいえ、せっかく立ち上がったのだからと、守焉の裁可が必要な書類をまとめて総轄長執務室へ向かった。

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