深淵シリーズ短編集

□闇に思ふ
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「三代目、これが今日の分です」
 火影の執務室を訪れた任務戦略解析部隊総轄長・守焉は、いつものように淡々と書類を提出する。
 正確無比な情報と判断しやすいよう緊急度に応じてまとめられた書類に、三代目は目を通しながら感嘆した。
「相変わらず見事じゃの。おぬしのおかげで処理が滞りなく進むようになった。感謝しておる」
「ありがとうございます」
 三代目の礼も顔色を変えずに流してしまう守焉に、苦笑を浮かべた三代目だったが、怒ることなく穏やかに告げた。
「おぬしにばかり負担を掛けていつもすまぬと思っておるのじゃ。どうじゃ、わしが出来ることで何か願いがあれば聞くが何かないかの」
 三代目の申し出にいえ、と断ろうとした守焉だったが、暫し考え込むとおもむろに口を開いた。
「では、一つ頼みたいことがあります」
「なんじゃ」
「これを彼の人に……渡していただきたい」
 守焉から差し出されたのは一つの長細い箱。
 シンプルだがさり気なくラッピングされたその箱を思わず受け取った三代目は、すぐに察して顔を顰めた。
「これは直接おぬしが渡したほうが良いのではないかの」
「いえ、まだ会ったことのない俺が直接渡すのは不審がられて受け取ってもらえないでしょう。貴方からのほうが受け取る確率も高くなる」
「そうかのう……」
 三代目は箱と守焉を交互に見ながら小さく溜息を吐いた。
その顔に納得がいかないと言う雰囲気が漂っていたのだろう。
守焉はくすりと笑い、その裏にある三代目の温かい想いを感じながら補足した。
「解部の基礎が磐石になって上手く動き出すまではこちらに集中したいんですよ。やるからには妥協はしたくないので」
「そうか。わかった。もう何も言うまい」
「ありがとうございます」
 己の意思を撤回するつもりがまったくない守焉にその覚悟を見た三代目は早々に諦め、守焉に預かった箱を机の上に置いた。
「時に、守焉。これをわしに預けたおぬしに聞きたい。明日はおぬしにとってどんな日じゃ」
 三代目がそれを訊ねたのは、シカマルの気持ちを再確認する軽い気持ちからだった。
だからその言葉を彼の口から聞くことになるとは思わず、聞いた瞬間耳を疑った。
「……明日ですか。一番憎い日ですよ。怒りが込み上げるくらいに、ね」

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