同い年の親子シリーズ

□五歳の息子と五歳の両親
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一番古い記憶は三歳。
 森の中に一人取り残された自分の姿。
 森は暗く、不気味なほど静かで、時折聞こえる獣の咆哮は幼心に言い知れない恐怖を与えた。
 そこで学んだ自己防衛手段は感情を押し込めること。
―――何も聞かない、泣かない、感じない―――
 それは数日のうちに身につき、人形のようにただ座り続ける日が続いた。
身につけば本当に何も感じなくて。恐怖がだんだん薄れていくことがわかり、これでいいのだ、と思った。
 そんなある夜、目の前に鮮やかな二つの色彩が飛び込んできた。
 銀色に輝く長い髪と深い緑色の瞳。
 闇色に溶け込む長い髪と深い青色の瞳。
どちらも奇妙なお面をかぶっていたが、目の前で驚いたように立ち止まると、お面を取って近づいて来た。
 その姿はとても綺麗で。
感情を忘れたはずなのに、温かいものが体中を駆け巡った気がした。
 銀色の人と闇色の人は誰にももらったことのなかった温かなぬくもりと、サイ≠ニいう名前と、一つの約束をくれた。
―――俺達が親代わりになってやる―――
 その言葉が嬉しくて、まだ感情が残っていたことに驚きつつ、銀色の人を母上、闇色の人を父上、と呼んだら二人は苦笑いしながらも受け入れてくれた。
 新しく出来た両親に連れられて木の葉の里についた時、で幸せな生活が始まることを疑いもしなかった。
もう感情を殺さなくていいのだとそう思っていた。
 しかし、それは大きな間違いで。  
別の大人によって何故か両親と引き裂かれてしまった。
 両親の愛情の変わりに与えられたのは忍の力。
身につけないと両親には会えないと言われ、地獄の日々が再び始まった。
 次々と与えられる知識。
それは殺人人形になるためのもので、毎日囁かれるのは優しい言葉ではなく、『忍には感情は必要ない』という冷たい言葉で。 暗示のように頭に残った言葉は感情を再び押し込めるものとなった。
 ただ、一つだけ、忘れることの出来なかったもの。
それは両親との約束。
生きていればきっと再び会える。
そんな小さい小さい希望にすがり付いて二年の時を過ごした。
 五歳になった日。
表向きの保護者であるダンゾウに、突然暗部に入れと命じられた。
 これから殺人人形としての日々が始まるのだとわかったとたん、胸がとても痛くなった。
それがまだ自分が人間なのだと思い知らされることとなって無性におかしくなった。
 すべてを諦め、希望を捨てて、壊れかけた心のまま落ちていく決意をして火影の下に参上したのに……
 なのにこの状況は何なのだろう?
 目の前で繰り広げられる光景を信じられず、食い入るように見つめる。
 視線の先には夢にまで見た銀と黒の一対。
 彼らは入ってくるなりこちらを見て目を見開き、その後、ダンゾウに向けて恐ろしいまでの怒りをぶつけていた。
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