本編1

□独占欲
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「ところでシカ、暗部時の姿はどうするの?」
 シカマルの暗部への正式入隊が迫ったある日、歴史書を読んでいたナルトは同じく書物に没頭していたシカマルに問い掛けた。
 唐突な切り出しに、シカマルは一瞬何を言われたのかわからないという風にきょとんとしていたが、すぐにああ、と頷いて答えた。
「どうせ面を着けるし、年を上げただけで問題ないだろうと思ってるが…いけなかったか?」
 その返答に、ナルトはだんだん機嫌が悪くなり、シカマルは不思議そうに首をかしげる。
「でも万が一って事があるだろ! 何でいつも用意周到なくせに、今回は手を抜くんだよ!」
 珍しく突っかかるナルトにシカマルは何かあるな、と思ったが、特に拘ることでもなさそうなので、気にするのを止めた。
「わかった、そこまで言うなら考える。……どうせなら暗部名と同様、ナルと対にするからちょっと変化見せてくれるか?」
「えっ…」
「嫌か?」
 ナルトはシカマルの提案に顔を真っ赤にして口ごもったが、機嫌は手のひら返したように良くなり、嬉しそうな表情でにっこり笑った。
「ううん、嫌じゃない、わかった」
 肯定と同時に行われた変化の術。
 現れたのは蒼光としての姿をしたナルト。
 十八歳くらいに成長させ、青銀色の腰まで伸ばした髪を一つにゆるく縛り、瞳は青から深い緑に変わっている。
髪の色、瞳の色、そしてチャクラ質まで見事に変わっているものの、顔立ちはナルトを大人にして感じそのままだ。
「ナル、人のことを言ってるけど、お前も顔立ち変えてねーな」
 シカマルの呆れ顔にナルトはムッとしながらも、負けじと反論する。
「シカよりはいいよ! ちゃんと髪も目もチャクラ質も変えてるもんっ」
「あーわかった、わかった。じゃ、これでいいか?」
 ナルトの言い分にシカマルは苦笑しながら印を切り、変化を行う。
 現れたのは十八歳の美青年。
漆黒の髪を腰まで伸ばして一つにゆるく縛り、瞳は深い青。チャクラ質もきっちりと変えており、蒼闇の名に相応しい姿がそこにあった。
当然、宣言通り蒼光とは対をなすような姿だ。
だが、やはり面影はうっすらとシカマルが残っていて。ナルトは再び機嫌を損ねた。
「シカ、それじゃシカだってわかるよ! もっと顔立ち変えないと!」
「ナル、どーしたんだよ、ちょっとおかしいぞ? チャクラ質変えて眼の色違えばたいていの者は気付かねーよ。 むしろ思いっきり変えてしまうほうが怪しまれることくらい現役暗部のお前ならわかるだろ?」
 シカマルは、いつもと違う様子にさすがに不審に思い、ナルトの視線を捉えた。
とたんにナルトはおどおどした様子で視線を逸らし、口を閉ざしてしまう。
「ナル? 怒ってるわけじゃないんだ、お前がそこまで拘る理由が知りたい。理由がわからねーと俺もどうしようもない」
 優しく諭すシカマルにナルトは小さく溜息をつき、シカマルの顔をまっすぐに見た。
「ごめん、俺もどう言ったらいいかわからない。だから、もうそれでいい。だけど、一つだけ約束して! 絶対に俺や三代目のじいちゃん以外の者にその姿見せないで!」
「? …ナル?」
「お願い、シカ!」
 ナルトの真剣な表情に理由はわからないものの、何かあるのだと感じて、シカマルはそこまで言うのであれば、と頷いた。
「…わかった、約束する。でも、暗部は面を着用するからそうそう失態は犯さねえよ、大丈夫だ」
「うん、信じてる。約束!」
「ああ」
 ナルトの機嫌も直り、笑顔が戻ったのを見てシカマルも安堵する。
シカマル自身、表に出る気などないし、暗部である以上、面を着用すれば顔を見られる心配もない。
見られるような失態も今の実力であればそうそう犯すはずがないという自負もあり、気軽に約束をしたのだが、将来、この約束がきっかけで一騒動起こる事など三歳のシカマルにはさすがに予測がつかなかった。
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