深淵シリーズ短編集

□闇に思ふ
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 本邸に戻った刹華は、変化を解いてナルトに戻り、机の上に置いた守焉からのプレゼントをじっと眺めていた。
「どうして、俺に……いや、刹華に……?」
 彼は刹華の誕生日を知っているのに、刹華がナルトであることに気付いていないのだろうか。
 そうなのかもしれない。
 そうでなければ九尾を憎む彼が自分にプレゼントなど渡すはずがない。
 一応の結論をつけたナルトは、意を決してプレゼントの箱を開ける。
そしてその中に入っていたものを見て目を見開いた。
 中に入っていたのはメッセージカードと美しい細工が施された艶やかな漆黒の鉄扇。
持ち手に黒蝶香という文字と白波留一≠ニいう銘が入っている。
 白波留一、と言えば腕がいいが気に入った者にしか作らないと有名な鍛治師。
彼に武器を作ってもらえるということは人となりも悪くはないということ。
 どこか唖然としつつ、メッセージカードを見たナルトは、息を飲んだ。

『誕生日おめでとう
 この世で最も幸せになる権利を持つ君へ   守焉』

「守焉……お前は一体……」
 思わせぶりな言葉が、刹華がナルトであることを知っていると暗に告げているようで。
 ナルトだと知ってプレゼントを贈ってきたのであれば、憎いというあの言葉はなんなのか。
 彼は一体自分に何を求めているのか。
 どう考えているのか。
 何もわからないまま、ただ送られた黒蝶香をナルトはそっと胸に抱きしめた。
 己の中に何かが芽生え始めていることを気付かないまま。

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