本編1

□約束
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「…で、どうしたんだよ、一体」
 あの後、取り敢えずこのままじゃ落ち着かないから、とシカマルはナルトを放して風呂に入り、さっぱりしてから戻ってきた。
その間にナルトはシカマルの為に軽い軽食を用意し、自分もお茶を入れてシカマルを迎えた。
 軽食を胃に収めてひと心地ついたシカマルは、気になっていた先程のことを口にし、ナルトは思わず動きを止める。
 そのまま目を彷徨わせて答えないナルトから視線を外さず静かに見つめてくるシカマルにナルトは吐息を吐いてようやく口を開いた。
「…今日、ヒナタにチョコレート貰ったんだ」
「? ああ、俺も貰った。今日はバレンタインだからな」
 事も無げに返し、それで? と視線で促すと、ナルトは続きをポツリと話す。
「俺、ヒナタに貰うまで、今日がバレンタインだって忘れてて…シカに、何も用意してなくて…」
 申し訳なさそうな顔をするナルトに、シカマルはなるほどと頷く。アカデミーの帰り、ちらりと見たナルトが悩んでいる風だったのを見て少し心配していたのだが、理由がわかって少し安心したのだ。
「…そんなこと、気にしなくていいぞ? そんなのなくてもナルの恋人だし、気持ちがあれば俺は十分だ。わざわざ一般行事の型に当てはめなくても互いがあればいい」
「シカ…」
 穏やかに笑うシカマルに、ナルトはシカマルの包み込むような愛情を感じ、思わず目を潤ませる。
―――そんな彼だからこそ、望むことをしてあげたい。
 ナルトの心はただそれだけが強く残り、先程までの動揺が嘘のように凪いでいた。
「…ヒナタに聞いたんだ。バレンタインにはその人の欲しいものをあげるという方法もあるって。だから…」
 ナルトはシカマルへの想いを込めてそっと彼の唇に自らの唇を寄せる。
 突然の行動に驚いたシカマルだったが、だんだん歓喜の表情に変わっていき、ナルトを抱き締めると、そのまま本格的に口付けを交し合う。
「ん…ふっ…はぁ…」
 互いの舌が交じり合い、水音が耳に届く。
 いつもは少し恥ずかしいそれも、今日は何故かとても心地良く聞こえて。
 ナルトはうっとりとした表情でシカマルと愛を交し合った。
「…ん…はぁ…シカ…」
 いつもより長い口付けから開放されたナルトは嬉しそうに微笑むシカマルにもう一度、軽く口付ける。
そして恥らうように笑って告げた。
「シカ、大好き。シカとの約束を叶えること…それが、俺のプレゼントだよ」
「…ありがとな、ナル。俺にとって最高のプレゼントだ」
 シカマルの心からの笑みにナルトは良かったと安堵し、上気した頬を隠すようにシカマルに抱きついて胸に顔を埋めた。
「…来年はチョコレート、用意するから」
 小さく呟かれた言葉はナルトの精一杯の照れ隠し。
シカマルは期待してる、と言った後、ナルトの耳元に囁いた。
「その前にホワイトデー、だろ。お返し、ナルが欲しいものあったら先に言えよ」
 シカマルにそう言われてナルトは思わず顔を上げる。
「じゃあ、シカ、その日はずっと傍にいて」
 すぐに返ってきた言葉にそんなことでいいのか、と目で問うと、ナルトはこくりと頷く。
「わかった、来月楽しみにしておけよ。ずっと傍にいるから」
 了承したとたん、花が咲いたような明るい笑みを浮かべたナルトに、シカマルは来月のホワイトデーの計画を頭の中で練り始めるのだった。

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