本編1

□発覚
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「…終わった?」
「ああ」
 抱きついたまま訊ねるナルトにシカマルは頷く。
手に持っている書類が気になり目をやると、ナルトにも見えるように書類を翳して口を開いた。
「今まで調べた中で一番黒に近いのがこいつだ。八割の確率で事件に関わっている。だが、こいつだけじゃないはずなんだ。あんな大それたことをしでかすには相応の理由と利益、そして計画が必要となる。裏の繋がりを全部引き出すには直接本人から聞くしかねえだろうな…」
 溜息混じりに話すシカマルの声を聞きながら、ナルトは書類に目を通す。
「うちはカマラ、上忍…分家の末端か。写輪眼の開眼もなく能力は並。得意忍術は…ああ、やはり火遁だな。確かにこいつが一人で、というのはおかしいな。シカの言う通り裏に誰かいるはず…普通に訊いて答えてくれるはずがないから、無理に吐かせるしかないけど…」
「それをするなら、短期間に正確な情報を引き出す必要があるな」
 秘密裏に接触し、無理矢理吐かせるときたら方法は限られてくる。
シカマル頭に幾つか浮かんだ中でも最も有効だと思えるのは一つだけ。
「ま、ここは単純だが拷問にかけるのが一番手っ取り早いだろうな。万全を期すなら餅は餅屋ってところだが…」
「俺達でもやればできないことはないけど、分野外だしね。でも、あそこの長は駄目だろ?」
 シカマルの言外に自分達では駄目だと言うニュアンスが聞き取れ、それに同意しながらもナルトは首を傾けて告げる。
 拷問部隊の長が九尾の器排除派であるのは有名な話だ。
そのような輩に協力を求めるなど論外。
 そう言いたげなナルトに対してシカマルはにやりと笑った。
「長があれだからって部下の全てが染まっているとはかぎらねぇ、だろ?」
「まあ、そうだね。で、シカマルは目星つけてるの?」
「まあな。段取りを付けてみる」
「…無理しないでね、シカ」
 笑っているシカマルの顔色が悪いことに気付いていたナルトは、シカマルの頬にそっと手を当てる。
 指に伝わる温もりがいつもより熱く感じて、ナルトは慌てて額に手を当て直した。
途端に感じた熱さにナルトの表情は不安を表したものに変わる。
「シカっ、熱あるじゃないか!」
 顔を顰めて怒るナルトをシカマルはうっすらと笑って抱き寄せる。
「このくらい大丈夫だ。一日寝れば治まる範囲だからな」
 宥めるように顔中口付けを降らすシカマルにこんなことでは誤魔化されないと思いながらも、いつの間にかうっとりと甘受してしまうナルト。
それを愛しげに見つつ、止めとばかりに唇を奪った。
「…ふっ…ん…」
 ナルトの口内はとても熱く感じられて。
逆に熱が上がりそうだ、と頭の片隅で考えながら、シカマルは口付けに没頭するナルトを抱き締めなおす。
「シカ…」
 唇をひと舐めして離れて見たナルトの表情は、目元が潤み、頬が上気していて。
シカマルは高鳴る鼓動を必死で押し留めて立ち上がった。
「ナルの言いたいことはわかってる。今日は大人しく寝るよ。ナルも、もう寝るだろ?」
「うん。明日も早いし、休む暇もなさそうだしね」
「ああ、イタチが班長格へ昇格するんだったな」
 シカマルが思い出したように言うと、ナルトが少し複雑そうに頷く。
「夕方から昇格の通達と班員の顔見せがあるから、アカデミーが終わったらすぐに行かないと」
 二人の真実を知ったイタチの成長ぶりは凄まじかった。
 今まで以上に修行に打ち込むようになったイタチは、そのもって生まれた才能もあってか、一ヶ月経たぬうちにシカマルの合格ラインを突破し、暗部入隊を果たしたのだ。
 そして、暗部でも実力を遺憾なく発揮し、僅か半年足らずで班長格への昇格が決まった。
 ナルトもシカマルも初めはうちは≠ニいうことで、警戒していたのだが、彼のひたむきで曇りのない想いにいつしかうちは一族全てが敵に回ったとしても、イタチだけは裏切らないだろう、と認めるようになっていた。
 それでも、ナルトの中にいる神金緋はイタチのチャクラを感じると条件反射で身構えてしまうらしく、ナルトは彼を認めつつ、必要最低限の接触しか出来なかった。
「ナル、そんな顔するな。神金緋のことは時間で解決するしかないし、犯人がわかれば落ち着く事だってあるだろ」
「うん、わかってる…」
 複雑そうな表情を見て何を考えているのか察したシカマルが慰めれば、ナルトは小さく頷く。
 ナルトはイタチの気持ちに嘘がないことを感じると、その気持ちに対して応えられないことを申し訳ないと思うようになっていた。
 他人から向けられる感情が負のものばかりだったナルトにとって温かい感情を向けられることは嬉しくないはずがない。
同時に拒絶される辛さも知っているのだからイタチに対して多少なりとも応えてあげられないことに罪悪感を抱くことも当然のこと。
 唯一の存在であるナルトが自分以外の者を気にするのを見て面白くない気持ちはないと言えば嘘になるが、ナルトの気持ちを大切にしたいと思うシカマルはそれを表に出すことはなかった。
 ただ、気になるのはイタチの心情。
 暗部に入り力をつけてもなお真っ直ぐに見てくれないナルトへ向けるイタチの視線は、前ほどあからさまではないが、苛立ちと悲しみ、そして愛しみの感情が千々に乱れていて、時折危うさも感じる。
「爆発しなければいいけどな…」
 小さく呟かれた言葉はナルトの耳には入らず、首を傾げて何か言った? と訊ねるナルトにシカマルはなんでもない、と答えて休む為に一緒に寝室へ向かった。

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