本編1

□戸惑い
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 シカマルが何をするのか想像がつかなかったナルトだったが、それほど待たずして時は訪れた。
 いつもより早い時間から数の多い任務を蒼闇と二人でこなすことになったその日の最後の任務。
蒼光は近くにあってはならない気配を見つけて息を飲んだ。
「蒼闇…っ!」
 蒼闇に向かって思わず咎めるように名を呼んだ蒼光に蒼闇は反応を予測していたのか落ち着いた声で答えた。
「蒼光、大丈夫です。私を信じて」
 そう言われた蒼光は、はっと彼の先日の言葉を思い出す。
―――これから俺がやることに驚くかもしれねーが、何があってもおまえの悪いようにはしないから、気にせず普段のお前でいてくれ―――
「…わかった。信じよう。急ぐぞ」
「御意」
 蒼光は気持ちを切り替えると蒼闇に告げてスピードを上げる。蒼闇も頷き、スピードを上げた。
 向かうはうちはイタチと標的達が刀を交えているであろう北の森。
今宵の目的地である。






 イタチは焦っていた。
 少しでも強くなる為、毎日修行に出向く北の森。
 夜は暗部達の領域であることを承知しているイタチは、修行するなら昼と決め、必ず暗くなる前に帰宅していた。
 しかし、今日はたまたま新しい術書が手に入り、夢中になっているうちに気がついたら夜になってしまっていた。
遅ればせながら気がついたイタチは早々に帰ろうとした。
その時、そこに突然現れた明らかに敵と思しき忍集団。
反射的に身構えはしたが、多勢に無勢。
ざっと見ただけでも二十人以上はいる敵相手に一人で立ち向かうことは無理だった。
「くっ…どうすれば…っ」
 写輪眼を駆使して敵の攻撃を出来る限りかわしながら策を考えるが、相手も全く隙がない。
 ここまでか、と思った時、複数の忍の気配が一瞬にして消え失せ、驚いて辺りを確認した。
「大丈夫か」
 涼やかな声が横から聞こえてきて振り返ると、敵を切り捨てながら暗部がこちらを向いて声をかけてきていた。
「…っ、だ、大丈夫です!」
 イタチはその暗部のしなやかな動きと美しさに一瞬見惚れかけたが、気を取り直して返事を返した。
「敵の術は使えないように封じた。問題ないとは思うが結界でも張って身を守っていろ。お前は中忍だ、自分の身は自分で守れるな?」
 暗部の言葉にイタチは即座に頷く。
そして、自分にも出来ることをしたいと考えたイタチは更に自らの気持ちを伝えた。
「俺は、火遁が使えます。隙があれば状況しだいで仕掛けることも可能ですが…」
 それを聞いた暗部は少し考えていたが、やがて小さく頷き返事を返した。
「…判断は任せる。好きにしろ」
「ありがとうございます!」
 無理に参戦するわけではなく、状況を見てという言葉に判断力を評価されたのだろうか。
許可が下りてイタチは内心喜びながら頭を下げた。
「蒼光、あちらは片付きました。後はこちらの忍達のみです」
 突然現れたもう一人の暗部にイタチは一瞬驚いたものの、すぐに冷静さを取り戻す。
その横で、今までイタチと話していた暗部は、蒼光と呼ばれて頷き、敵をざっと見渡した。
「あと十人…すぐに終わらせる。蒼闇」
 蒼光はその暗部に蒼闇と呼びかけて促したが、蒼闇は何故かそれに頷かず、蒼光を引き止めた。
「蒼光、待ってください。せっかくですからイタチに手を貸してもらいませんか」
「蒼闇?」
 蒼闇の突然の進言に驚いた蒼光は思わず意識を敵から離す。
その隙に一人飛び掛ってきたのだが、後ろに目があるかと疑いたくなるくらい鮮やかに振り向かないまま斬り捨てた。
「蒼闇、どういうつもりだ?」
 斬り捨てられた忍を見た他の者達は恐れをなして数歩後退りする。
しかし、逃げることも叶わずそのまま立ち往生して様子を窺っていた。
「…実力を測りたいのですよ。噂は聞いておりますので」
 イタチは蒼闇の言葉に頬を紅潮させる。
暗部にまで自分のことを知って貰っているということがイタチにはなにより嬉しかったのだ。
「俺はかまいません、ぜひ手伝わせてください!」
「…わかった。全員に一時金縛りをかける。そのタイミングで得意の忍術…広範囲に有効なものをかけろ」
「御意!」
 蒼光は蒼闇の進言を受け入れ、イタチに命ずる。
イタチは与えられた役割に気分を紅潮させつつ身構えた。
 イタチの準備が出来たのを見た蒼闇が鮮やかな手際で敵を一ヶ所に誘導し、蒼光が金縛りをかける。
 まんまと罠に嵌り、動けなくなった敵の忍達に向かってイタチは一瞬のタイミングを逃さず得意の火遁を発動させた。

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