本編1

□出会い
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 暫くして、落ち着いたナルトを確認したシカマルは、抱きしめたまま意を決して思いを告げた。
「なあナルト、俺じゃ、ダメか?」
「え……?」
「俺じゃ、お前の隣に立てないか?」
 ナルトは何を言われているのかわからず聞き返す。
そして、もう一度言われた言葉を頭の中で整理して、ようやく理解した。
シカマルは共に生きてくれると言っているのだ。
暗部に入り、今よりさらに傍にいてくれると。
 ずっと欲しかった言葉を言われてナルトはにわかに信じられず、戸惑った。
「シカマル…だって、シカマルはそんな生き方望んでいなかっただろ? だから俺……」
「今まではな、表も裏も目立って動くつもりはなかった。でも、それはお前に会うまでの話だ。お前に会って、こうやって親しくなって真実を知って。共に生きたい、と思った。その為ならどんな事も厭わない。……それ程、俺の中でナルトの存在は大切になっているんだ。それこそ俺の命よりも、な」
「シカマル……」
 ナルトはシカマルから体を離し、彼を正面から見た。  
シカマルの顔は多少赤く染まりながらも真剣で。
偽りではないのだと、そう目で訴えてくれていて。
止まっていた涙がまた零れた。
「ナルト、お前の本当の心の内が知りたい。俺はお前の隣に立てるか?」
「俺は……おれ、は……立って、欲しい。シカマルに、俺の隣にいて欲しい。俺も、シカマルが大切なんだ。育ててくれた三代目のじいちゃんよりも、シカマルは俺の中で大切になっていたんだ……願っていい、の?」
 涙を拭きながら今まで言い出せなかった想いを告げるナルト。
その答えにシカマルも嬉しそうに微笑み、頷く。
「もちろんだ、ナルトがそう言ってくれて嬉しい。俺は、永遠なんて信じないけれど、これだけは誓える。これから先、一生ナルトに対して本当の意味で裏切ることは有り得ない、俺はお前の為に生き、お前の為に死ぬ。それがようやく見つけた俺の道だ」
 シカマルの誓いにナルトは目を見開いて首を振る。
誓ってくれるのは嬉しい、自分の為に生きてくれるというのはすごく心苦しいけれども、とても嬉しかった。
でも、自分の為に死ぬということだけは絶対に聞き捨てならない。
シカマルに会えない生活など自分には考えられない所まで来ていることを思い知ったばかりなのだから。
「だめ、俺の為に死ぬのはダメ! 先に死んだら許さない! ……その時は一緒に」
「…ああ、わかった」
 シカマルもナルトの言わんとする所がわかり、静かに頷く。
お互いに誓い合い、心を確かめ合い、ようやく気持ちが落ち着くと、どちらからともなく、くすり、と笑いあう。
 お互いの心の内を確かめるのになんとまあ遠回りしたことか。
冷静に考えればここまで取り乱すことなどなかっただろうに。
やはり自分達は心が未熟なのだと思いながらも、晴れやかな気持ちで見つめ合っていた。
「ナルト、ちょっと提案があるんだけど、いいか?」
「なに?」
 突然、顔を真っ赤にしながら言いにくそうに切り出すシカマルに、めずらしいな、と思いながら聞き返す。
「お互いの呼び方、変えねーか? 親父が言ってたんだけどな、お互いだけの呼び名を決めて呼び合うと特別な絆の証のように思えるって……俺だけが呼べるお前の呼び方があったら嬉しいな、ってそう思っちまったから…」
 今度はナルトが赤面する番だった。
シカマルがそこまで想っていてくれているとは思わなかったのだ。
素直に嬉しい、と感じながら、頭の中で呼ばれて欲しい名前を考える。
すぐには思いつかないかもしれない、そう思ったナルトだったが、思いのほかすぐに頭の中に浮かび上がった。
「だったら俺、ナル≠ェいい。シカマルにそう呼ばれたい。なんかこの呼び方すごく心が温かくなるんだ」
「わかった、じゃあ、俺はシカ≠セな」
「ひょっとして俺に合わせた?」
「……」
 黙りこんでしまったシカマルがどんな表情をしているのか想像がついてしまって、ナルトは、くすくすと笑いながらシカマルの顔を覗いた。
「シカ?」
「……っ」
 シカマルの顔は、これ以上ないほど真っ赤に染まっていて。
思わず大声で笑ってしまった。
「……ナルっ!」
 怒ったシカマルだったが、顔を赤くしていてはその効果も半減してしまい、ナルトはまた笑う。
「だって、シカが言い出したことなのにっ、自分で言って照れたら本末転倒だろっ」
「わるいかよっ」
 拗ねたように言い捨てるシカマルにナルトは笑いを治め、シカマルに抱きつく。
「ううん、悪くない。…ありがとう、シカ。俺、今最高に嬉しい。ずっと、一緒にいて、シカ」
「ああ、これからよろしくな、ナル」 「うん、よろしく」
 二人は言葉のうちにお互いの想いを読み取りあい、しっかりと抱きしめあう。
これが、二人にとって人生の中の一つ目の大きな分岐点であったことなど、今の二人が知る由もない。
 ただ、お互いが傍にいられることの喜びを深く深く感じあっていた。
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