本編1

□木ノ葉の知神
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 広間に静かだが鋭い気配が広がり、暗部達は会話を止めて誰からともなく等間隔に整列する。
 整列し終わったと同時に扉から蒼光と蒼闇、そして氷月、白蓮と顔の知らない男と女の暗部二人が姿を現した。
―――一体誰だ? 新人暗部だろうか。
 誰もが内心不思議に思い呟いたが、表には出さず静かに蒼光と蒼闇の言葉を待つ。
ここで騒げば二人の叱責を食らうのが目に見えているからだ。
 前に立ち、整列して静かに視線を向ける暗部達を見た蒼光は、共に入ってきた蒼闇が隣に、白蓮達四人が扉側の前に並んで立ったのを確認すると、ゆっくりと口を開いた。
「集まっているな。皆も知っている通り。本日より暗殺戦術特殊部隊は新体制で任務に臨むことになる。新体制の仕組みについて説明するが一度しか言わないからしっかり頭に叩き込め」
 蒼光の言葉に気を引き締める暗部達。
 皆の気配が真剣なものに変わったのを確認した蒼光は蒼闇に視線を向ける。
蒼闇は蒼光の視線に対し目礼すると、一歩進み出て説明を始めた。
「では、私から新体制の説明をいたします。初めに一つ言っておきます。今までの任務は待機中の者の中で臨機応変に選んで遂行しておりましたが、これからはすべてを一新して全く違う方式に変わります。今までのことはすべて頭から叩き出しなさい。いいですね」
 蒼闇の静かだが厳しい声に皆は無言で頷く。彼らの反応に満足した蒼闇は話を続けた。
「新体制は四隊十二班体制でいきます。一隊の構成は一人の隊長の下に二人の補佐を置き、隊長と補佐の三人を班長とした三人一組(スリーマンセル)を配置します」
 ざわり。
 暗部達に驚く気配が広がる。
 通常、一番望ましいとされるのは四人一組(フォーマンセル)だ。それを危険な任務を遂行する暗殺戦術特殊部隊が三人一組で動くと宣言されては驚かないはずがない。
 そんな彼らの驚きを予測していたのか、蒼闇は平然とした顔で補足した。
「四人一組ではなく三人一組にしたのは、機動力を重視したからです。暗部の任務は素早く行動するのが鉄則。どのような状態でも臨機応変に動けるようにするには三人一組が理想だと私も蒼光も判断しました」
「つまり、暗部総隊長である俺と総副隊長の蒼闇の下に四人の隊長がつき、四人の下に各三班を置く少数精鋭。人数的にも上下の連携だけでなく横の連携も行き届きやすい最良の体制だ」
「何のためにあなた方を任務で鍛えたと思っているのです。暗部全体の力の底上げを行ったのはまさにこのためですよ」
 三人一組でも任務を楽にこなせるようにするために今までの数年間があった。
 そう聞かされた暗部達はそうだったのか、と蒼光と蒼闇の先を読んだ計画に感嘆した。 しかも暗部達がおぼろげに察していた通り、縦の命令系統だけでなく横の繋がりを重視し、組織としての絆の強化を狙っていた。
 少数精鋭で機動力を得て組織力を強化し、今までの任務で暗部が互いを知り得ることで絆と力の向上させた新しい暗殺戦術特殊部隊。
 この状態が弱いはずがない。

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