本編1
□木ノ葉の知神
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広間の中心に数人の暗部達が集まって話す姿が見える。
暗部達の中心に立ち、願望交じりの軽口を叩いているのは刹葵と鵠紫だ。
彼らは蒼光と蒼闇が暗部総隊長、総副隊長に任命された際に唯一面と向かって蒼闇の総副隊長就任を反対した者達。
結局、蒼闇への認識が誤解から成り立っていたと理解した彼らは、就任を認め、謝罪することとなった。
ただ、この一件で蒼光と蒼闇の面識を得た二人は、いろんな意味で目を掛けられ、他の暗部達よりも多くの時間を二人と過ごしている。
それが他の暗部に妬ましく思われないわけではないが、彼らの無謀にも近い度胸と気概は誰もが認める所なので冗談交じりに意地悪な言葉を向けられることがあっても陰湿な苛めには至らなかった。
それに二人の気質が明るく裏表がない、はっきりしたものだったことも幸いし、彼らの周りにはいつもこうして人が集まり、二人が繰り出す軽口を聞いては楽しんでいる。
暗部内のムードメーカー。
それが暗部達の彼らに対する認識だった。
「そういえば、刹葵さんと鵠紫さんってあんまり任務で別れたことってないですよね」
後輩暗部の一人が二人の会話に加わると鵠紫がそうだろ、と肯定する。
「高ランク任務になるほど俺達って一緒に行かされるんだよな。蒼光様も蒼闇様も俺達のこと二人で一人って考えているのかもって時々本気で思ったよ。でも、共に動く回数が多いからやりやすいのは事実だし。だから新体制でも一緒の班になるんじゃないかっていうのが俺の予想!」
「お前の場合、予想じゃなくて願望だろ。まあ、お前と動くのがやりやすいっていうのは俺も否定しないが」
「だろ!」
刹葵の肯定に我が意を得たり、とばかりに笑う鵠紫。
そんな二人を笑いながら見る暗部達の一人が茶化すように告げた。
「お前ら、一緒の班になる可能性は高いかもしれないが一緒の班になったって共に動けるかどうかはわからないぞ。それにお前らの実力なら、班長格に選ばれることだってあるだろ。蒼光様や蒼闇様の覚えもめでたいことだしな」
その発言にそうだそうだと頷く周りの暗部達。
刹葵と鵠紫は少し大げさに頭を振ると真っ向から否定した。
「俺達が班長格!? さすがにそれはないって!」
「そうそう、俺達よりも相応しい方が居るじゃないか!」
相応しいお方、という言葉に暗部達は思わず視線を辺りに彷徨わせる。
相応しいお方という言葉で誰もが連想する人物は二人。
蒼光が暗部に入隊するまで実力一位と謳われ、現在でも蒼光、蒼闇に次ぐ実力と皆が認める氷月。
そして、蒼光と蒼闇が暗部に勧誘してきた彼らの秘蔵っ子と囁かれる白蓮。
どちらも暗部達から尊敬と憧れの目を向けられる存在だ。
「……そういえば、お二人がまだ見えられていないな」
「ほんとだ」
話題になって気が付いた彼らの不在。
二人が集合時間に遅れることなどありえないことなのだが。
首を傾げる面々に答えが提示されたのは、その直後だった。