本編1

□発覚
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 真夜中。
 ずっと聞こえていた紙をめくる音が止んだことに気付いたナルトはシカマルに背後からそっと抱き付く。
「…シカ、今日は終わり?」
 耳元でそっと訊ねる声にシカマルは前に回されている手を撫でながら、あともう少し、と答えた。
「そろそろ寝よう、シカ。最近、根を詰めすぎだ。無理しないって約束しただろ」
 いつまでたっても調べる手を休めないシカマルにナルトは痺れを切らして紙をめくる手を押さえる。
シカマルは、ナルトに止められた手をじっと見つめると、ふうっと息を吐き、ナルトを仰ぎ見た。
「ナル…大丈夫だから。後もう少しで終わるから、な?」
 手を放してくれ、と言外に訴えるシカマルにナルトは暫く黙り込んだ後、しぶしぶ手を退けた。
 同時に、シカマルは先程よりも少し速いペースで書類に目を通し始める。
その姿に少し心配そうな顔のまま、ナルトは終わるのを待った。
 神金緋(しきび)の目覚めでうちは一族の中に九尾事件の原因を作った者がいると知ったシカマルは三代目に報告し、そのまま許可を得て調査に入った。
 うちはの宗家から分家まで全ての人物リストを作成し、尚且つ一人一人の状況調査を行う。
そして、事件当時の素行が少しでも妖しければリストに残し、更に調べていく。
 気の遠くなるような作業だったが、シカマルは黙々と作業を続けた。
 それに加えて暗部の任務やアカデミーで自分を偽りながらの名家旧家の子ども達の護衛もあるのだ。
いくつかの任務はナルトが肩代わりしているとはいえ、誰が見てもシカマルは明らかに無理をしすぎていた。
 特に彼の場合は、リミッターがある。
脳の活動が優れている分、使いすぎると精神と体が耐えられなくなり拒絶反応で頭痛や吐き気、果てには発熱をするのだ。それを知っているナルトはシカマルがいつ倒れるかとはらはらしていた。
 そんなナルトの気持ちをシカマルも十分わかっていたが、休むことは出来なかった。
 何故ならシカマルの心の中に怒りが宿っているからだ。
 事件の首謀者が木の葉の者というだけでも腹立たしいのによりにもよってそれが名家と謳われる一族の者だったなど、あってはならぬこと。
里を守り支えていく中心でなければならない者達が里を苦しめ、ナルトの幸せを奪う。
それを許されていることがシカマルはどうしても納得できなかった。
 そして、その感情の赴くまま全力を調査に注いでいた。
自身の体など今のシカマルにとっては二の次なのだ。
「……ここまでだな」
 全ての書類に目を通したシカマルは、一枚だけ抜き取り、他を机に置いた。
ゆっくりと息を吐き出すその姿に、ナルトは終わったのだと察し、安堵の表情を浮かべる。

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