黒髪の少女。
□黒と灰色
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パタパタと走り行く、ルシュリユは体の異変に気付いた。
眠気と、鳥肌が止まらない。
この睡魔に負けては、私はきっと・・・。
《ルシュリユ、わかっているよね?》
走らないと、走らないと、光にある場所へ。
《ルシュリユ、なぜ逃げるのだ?》
苦しい、瞼が重い。
お庭へ、お庭へ行かないと。
窓と窓の間の影が恐い。
《ルシュリユ・・・みぃつけた♪》
転ぶ。転んでから気付く、足の違和感。
影に掴まれた足から、何かが登ってくる。
「あぁ゛・・・」
体の中を伝うそれは、かすかな冷気とともに私を恐怖の中へ落とし入れた。
頭の上へ到着したと同時に、完全に乗っ取られたと思った。
「・・・ふふッ・・・私から逃げられるなんて甘い考え、捨てなさい。ルシュリユ。」
私から発せられた言葉は、私であって私でない。
ご主人様の言葉。
「クスクス・・・アハハハハハハッ!!!!
馬鹿な子だ、馬鹿な子だよ、ルシュリユ!!
こんな事で、私が消滅するとでも思ったのかい?」
子供の身体で、立ち上がりクルクルと回り始める。
「ダメな子だ、もう一回、調教し直さないと!!!!
その前に、消さなきゃね!!」
回った反動で、前向きに倒れる。
ガツンと音がして、案の定、おでこから血が出ている。
身体を半分起こし、窓の外に背を向けながら、廊下にぺったりと座り込む。
そしておでこに触り、不敵な笑みを見せた。
「ルシュリユ、君の友達、全部消してしまわなきゃね。」
滴る血の雫が大きな宝石のように固まり、地に落ちた。
すると、ルシュリユの体からまるで魂が抜けてしまったように、彼女は倒れる。
赤い雫は、窓の影に溶けて消えた。