黒髪の少女。
□いつかの愛
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『×××!今日も綺麗だね。』
『ありがとう×××、あなたは相変わらず白いわね。』
彼女は病気がちだった、彼女は黒い瞳と髪で人々を惑わせた。
『君の髪は相変わらず黒くて素敵だ。
僕は君を見ていると、とても幸せだよ。』
僕は、既に滅びた貴族の一人息子だった。
祖父が、人間の国で売られていた彼女を買った。
僕は、何も知らずに彼女に恋をしていた。
『×××、その傷はどうしたの?』
『本のページを捲る時に切れちゃったのよ。』
彼女は嘘をつくのがうまかった。
うぶな僕は、彼女が何を考えているかなんて知らなかった。
『×××、何の本を読んでいるの?』
『あなたが知らない本よ。』
彼女はベットでいつも本を読んでいた。
僕も本は沢山読んでいたが、彼女はもっと本を読んでいた。
『×××、今晩は何を食べたい?』
『要らないわ、日が暮れたらすぐに寝るもの。』
彼女は日が暮れるとすべての扉を閉めてしまった。
僕は朝が苦手で、毎朝ベランダで本を読む彼女を見る事ができなかった。
『×××、たまには月でも見に行こうよ。』
『いかないわ、行ったらあなたのおじい様に怒られるもの。』
彼女は僕の誘いをことごとく断った。
僕はめげずに何度も誘った。
『×××、僕は君を愛してるよ。』
『私は嫌いよ。』
彼女は僕が嫌いで、僕は大好きだった。