黒髪の少女。

□黒と灰色
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「グウェンダルさん!!」

「ルシュリユ。」

ピクニックから帰ってくると、丁度グウェンダルが前を横切る。
疲れた顔をしていたが、ルシュリユを見ると朗らかな笑顔を見せた。
先ほどの夢のことも忘れて、ルシュリユはグウェンダルに抱きついた。

「どこへ行ってきたんだ?」

「箱庭の花畑です、ヴォルフラムさんと遊んできました。」

「そうか・・・よかったな。」

グウェンダルはルシュリユの髪を撫でると、優しげな瞳を細める。
ルシュリユは思った。

「グウェンダルさん、お仕事大変ですか?」

「ん…?…いや平気だ…」

そう言うと、一歩後ろに下がり、グウェンダルの顔を見上げる。

「休めない仕事…ですか?」

大人びた仕草、種族不明の彼女は、魔族か人間かさえ分からない。
それが、魔族の年相応のものなのか。
人間の少女のものなのか。
曖昧に笑いながら、俺はルシュリユの目の高さにしゃがむ。

「大丈夫だ、すぐに終わらせる。」

「…うん…がんばってくださいっ。」

ルシュリユが首に腕を回してぎゅっと抱きしめた。
そのまま、俺の向かう方と反対へ走り去っていく。


5,闇と痛みのご主人様


「なんでキョトンとしてるんだい?」

どこからともなく、コンラートがやってきた。

「…あれは、本当にルシュリユか?」

「まったく…父親がそんなんじゃだめだろ?」

「…はぁ…ヨザックは戻ったか?」

立ち上がり、頭を切り替えた。
今は、あの忌々しいご主人様とやらを叩き伏せるのに専念せねば。

「もうすぐです、だから迎えに来たんですけどねぇ…。」

「?」

「少し、到着が遅いような…。」

おかしいなと、辺りを見回す。
道の向こうにも、影はなく、足音も聞こえない。
すると一匹の鳩が飛んでくる。

「この鳩は・・・ヨザック・・・?」

「何と書いてある?」

「あぁ・・・[調査報告]

先日ご命令されたとおり、あのアジトに戻り、部屋の中をひっくり返してみました。
すると、岩の間にたくさんの手紙があったので、一部を送ります。
それと、俺が入ってる間に、敵らしき人間を見つけたので、ちょっと追って来ます。
新しい情報が入りましたら、随時連絡しますので追加の兵とか必要ないですよ。

・・・だそうです。」

確かに、もう一枚少し汚れた封筒がある。
俺は、その封をとき、中を見た。
中から、黒い手紙が出てきた。

赤黒い文字は、こう刻む。


『先日は、お呼びいただき、誠に感謝申し上げる。
黒く稀な子、実に興味深い。
あなたの白を引き立てるに違いないでしょう。
あのような娘をどこで見つけたのやら。
うちにも一人頂きたいものです。
しかしお気を付けください、稀な子を欲しがるものはごまんと居ます。
あなたには不要な心配かもしれませぬが。
どうぞ、光にお気を付けなされ。
光は、いつまでも箱に納まっては居られますまい。
いずれは裏切られますぞ。』


「この稀な子ってルシュリユのこの事だよね・・・?
『娘の力』って・・・?」

どうやら、事態はとても深刻なようだ。
きっとこいつらのアジトには同じような手紙が山のようにあるのだろう。

「この手紙の主も、捕まえて処罰を下そう。」

なんら迷いのないエゴを振り撒いて。
俺は、書斎へ向かった。
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