黒髪の少女。

□茶色と白
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すみれ色の瞳が揺れていた。
茶色い瞳が笑っていた。

ギュンターはソワソワと城の中を歩き回る。
コンラッドはその姿を見て笑っている。

「ギュンター、落ち着いて。
そんなにルシュリユが見たければ、グウェンダルのところに行けばいいだろう。」

するとギュンターは絶句する。

「それが出来れば苦労などしません!コンラッド!!!」

詰まる所を言うと、グウェンダルが怖いのだ。
あのあとすぐに、追い出されたから。
恐ろしい形相で。
そう、般若のように。



2,このロリコンが。



「コンラッドに何が分かるのです!!!!」

「はいはい。」

どうやら、ギュンターは思った以上にルシュリユにゾッコンだったようだ。
この苛立ちようは常軌を逸している。

まさに犯罪的。

「ルシュリユ、あの美しい黒は…あぁ!
もっとお近付きになりたいッ!」

壁に額を叩き付けるのがそんなに楽しいだろうか?

もはや、病気だ。

「ギュンター、そわそわしていると奇妙に思われて、話しかけてくれないかもしれないよ。」

目をぱちくりとさせて、ギュンターは頷く。

「そ、そうですね。私とした事が…。
あぁでも…。」

「はは、言っても無駄か。」

彼の笑顔が一瞬悪意を帯びた。
しかし白い男は気付きもせず、またコツコツと城内を歩き回る。

このまま放っておくのも面白そうだと、コンラッドはそれから何も言わずに、ただ観察していた。

「…」

これは、俺が何も言わないと、ギュンターは無意識のうちにグウェンダルの部屋の方へ向かった。

…すごいな、愛の力は。

「ぁぁ…ぅ…ぐ、グウェンダル?」

扉の外から、グウェンダルに向かって話しかけている。

「グウェン、その、ち、ちょっと。
ちょっとだけでいいですから、ルシュリユに会わせてくれませんか?
駄目だというのは分かっているんです。
ただ、本当にルシュリユは(以下略)

だから、どうか!!どうか、ルシュリユに会わせてください!!!」

俺は、完全に笑いをこらえていた。
このロリ…何やっているんだ、ギュンターは。
途中で俺は、グウェンダルが部屋にいないことが分かった。

気付いてないのか?

ひとしきり笑うと、ギュンターは扉の前から動いた。
かなりガックリきている様で、俺はこれ以上追わないことにした。
これ以上、あの姿を見ていると、なんだか俺の中でのギュンター株が大暴落しそうだから。
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