黒髪の少女。

□黒と灰色
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1,まさかのセーラー服。



俺は、とある村を襲った賊の退治をしていた。
全員、青い服に赤いタイ。
困った、この量は少し多い。

「はぁぁぁっ!!!」

取り合えずだ、この奥に人質の子供がいるそうだ。
それを助けてしまえば、帰れる。

「おい、助けに来たぞ、早くここから…。」

そこに居た子供は、一人だけだった。

「お前だけか?」

「…」

こくりと頷く。

「他のものは?」

がらんとした部屋だ、真っ暗で、小窓すらない。
少女は、部屋の隅を指差す。
部屋を覆うごつごつとした石の塊が、不自然にそこだけ浮き上がっている。

「逃げたのか?」

また頷く。

「お前は残ったのか?」

また頷く。

「ならお前も来い。」

俺が手を伸ばすと、その子供の顔には、恐怖の色が見えた。

「おい」

さらに身を引く。

…しかたがない。

少し強引に、俺はそのガキを抱え上げ、アジトを出た。
アジトの外に出ると、子供の容姿が分かった。
髪が黒い。それに、瞳までが漆黒の、まれな少女だった。

外で、コンラッドが待っている。

「グウェンダル、子供達は?」

「俺が行った時には、この子だけだった。
他の子供は、逃げ道を作って逃げられたらしい。」

コンラッドは、少女に、優しく問う。

「君は逃げなかったの?」

少女は、俺のときと同様、頷くだけだった。

「どうしてだい?お兄さんに教えてごらん。」

自分でお兄さんというのは、どうかと思うがな。

「…だれも…いなくなったら……
ごしゅじんさま…が…おこる…の…」

俺には一言も喋らなかったくせに、コンラッドには話すのか。

「ご主人様?それはあそこで一番、偉い人?」

少女は頷く。

「それなら、余計逃げるべきなんじゃないの?」

「…ごじゅじんさまは…わたし、が…いれば、みんなをおわないから…」

なるほど、この娘なら確かに、いい値段で取引できるだろう。
他の子供が、完全に逃げるために、一人で残ったのか。

「わたしは、黒いから…。」

泣きそうに声を振り絞る。

「そうか…、よく頑張ったね。」

コンラッドが娘に微笑みかける。
しかし、とうの娘の方はすでに眠りについている。

「コンラッド隊長!中に残っていた残党をどういたしますか?」

他の兵が来た。
娘は、俺の腕の中ですやすや眠っている。

「あぁ今行く。
グウェンダル、その子頼みます。」

「あぁ…」

コンラッドが走り去る。
風が、森の木々を揺らす。
少しだけ欠けた、俺の瞳と同じ色の月が、上から俺達お見下ろしていた。

俺は、少女の寝顔を見る。
そして、途方にくれた。

賊どもは、なかなか粘ったらしく、救護班はそちらに出向いている。
他にこの娘を預ける事ができそうなものもいない。

…この子を、どうすればいいんだ?
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